専門家コラム
【連載企画】転職活動にともなう10の不安との付き合い方 第3回
<細井智彦> 細井智彦事務所代表 転職コンサルタント 大手人材紹介会社にて20年以上転職相談や模擬面接などの面接指導に取り組む。企画し立ち上げた面接力向上セミナーは12万名以上が受講する人気セミナーとして現在も実施中。採用企業の面接官向けにも研修・講義を開発し、人事担当から経営者まで、360社、面接官4000人以上にアドバイスをしている。2016年3月に独立し、フリーな立場から、引き続き個人と企業の面接での機会創出に取り組んでいる。著書『転職面接必勝法(講談社)』ほか多数
転職活動中の年末年始の過ごし方
はやいもので2019年もあとわずか。メーカー勤務の方は年末年始にはロング休暇がとりやすいので、日頃仕事に追われて自分と向き合う時間が取れないから、じっくり自分と向き合って将来を考えてみよう、と思っている方も多いのではないでしょうか。
じっくり時間があるからじっくり考えよう、そう思っていてもいざ休暇が始まるとなかなか思うようにいかず、気がついたらもう仕事はじめだ!そんなふうになりがちです。私なんか毎年そうですが、みなさんはどうでしょうか。長期休暇の過ごし方については以前のコラム『お盆と転職』にも書いてますのでよかったらお読みください。
それはさておき、年末であろうがなかろうが今回も不安との付き合い方を書きます。
転職活動にともなう不安 後半編(スキルが通用するのか/メンタル不全にならないか/他)
前回は【連載企画】転職活動にともなう10の不安との付き合い方 第2回にて、1〜4までの転職活動にともなう不安、一言でいうと「想像と違うことに対する不安」について書きました。
今回はのこりの5〜10について、です。
転職活動にともなう10の不安
- 騙される不安 「聞いていた話と違った」(仕事内容/教育体制/設備/残業・休日/反社会/倒産危険 など)
- 居場所があるか不安 「周りの人が受け入れてくれるか」「馴染むことができるか」
- 不適合不安 「価値観や方針がなじめるか」「社長のキャラクターが合わない」
- いじめ・ハラスメント不安 「セクハラ」「パワハラ」の可能性に対する不安
- 通用するか不安 「自分の経験・能力でついていけるか」不安
- メンタル不全になる不安 「孤独な転職活動」「書類・面接での不採用つづき」など
- 他にないか不安 「スカウトメールですぐに内定したけど本当にこの企業でいいのか」「他にもっと良い企業があるのではないか」
- 合意してもらえるか、退職交渉不安 「退職交渉への不安」「家族の合意が得られるか不安」
- 背徳不安 「お世話になった上司や会社に隠しながらの活動」「現職の競合会社への転職」
- モラル低下不安 「やる気がなくゆるすぎる職場」「危機感ない組織・メンバー」
さて、今回は各項目ごとに向き合っていきましょう。
5「自分の経験・能力で通用するか」という不安
これまで取り上げた転職にともなう不安たちは主に「実際と違う」という差異が生じることへの不安なので、自覚と準備行動によって低減できる類なのに対し、今回とりあげる不安の種類はもっと内発的なものです。
不安がないほうがカッコ悪い
「通用するか」という不安は、いままでの職場で成功体験がなく自信を持てない方が抱くもんだ、と思っていませんか?
新天地に向かって、なにも不安はありません!楽しみです!なんて言えたほうがカッコいいからそう思い込んでいる人もおられるみたいですが、不安があってはいけない、カッコ悪い、ロックじゃない、というように生きている人は憧れますが、ここで不安を認めることはなにもカッコ悪いことではないと思います。
最初の回でも書きましたが、向き合わずにいることで不安に気づいてなかったり、なにか不安になりそうなとき、それを感じる自分を認めたくないから蓋をしたり無視してしまうこと、ありませんか。そのまま突っ張り通せればそれはそれでカッコいいのかもしれませんが、いざ退職交渉といった場面で突然不安が巨大化してしまい、慌てるほうがカッコ悪いと思います。ま、そのほうが人間ぽくて可愛げがあるとも言えますが・・・・。
「健全な不安」について
通用するか、という不安は、なにも自信のない人特有のものではありません。むしろ、自分の仕事に自信をもって成功体験のある人が新しいことに挑戦するほど、いまの居場所を捨ててゼロベースでもう一度それ以上の場所が作れるか、本当に自分で通用しそうか、とプロとしては考えます。むしろそんなことも考えずにお気楽でいられるほうが、よほどの天才以外は採用する側からみたら不安が芽生える人です。
当事者意識の高い優秀な人ほど、これからのイメージを浮かべることができるので、不安を感じることができる、とも言えます。「不安」はあるかないかで捉えて、ある=だめ、ない=よい、じゃなく「健全な不安」はストレスと同じで、あるほうがよく「付き合える」ようにすることが大事なことです。
いざ内定がでてみると・・「なんか踏み切れない」
いざ内定がでてから不安になる方の多くは「なんか踏み切れない」という言葉がよくでてきます。実はこの「なんか」が大事なところで、不安が漠然としているのです。この漠然としたモヤモヤは、時に「直感」という人間のもつ大いなる才能が働く時に感じることも多いでしょう。一見、勘のように思える直感ですが多くの場合、いままでの膨大な経験知や暗黙知の蓄積データからプロセッシングされています。逆に経験知や暗黙知に乏しいと判断できず漠然とした不安が芽生えます。
不安は書き出して具体化させると「課題」に変えられる
さてこういった漠然とした不安はどう向き合えばよいでしょうか。それは不安を具体化して見える化させることです。ここでの「不安」は見えないものに対する漠然としていること自体の不安だったりします。こんな場合はまずどんなことが不安になりそうか、不安リストを作成してみましょう。そうやって不安の因子を分解し具体化するとどうでしょう、それはもはや不安というより「課題」になっていませんか。不安は具体化することで課題に変えることができるのです。
足りないものリストを書けば課題は目標にできる
そして、課題は入社後の当面の目標にすることも可能です。目標になればそれがやる気のスイッチにもできます。もっと言えばそれは面接時に実現したいこととして、志望理由にもできます。特におすすめなのが入社後の仕事を想像しながらいまの自分で活かせそうなものと足りないもののリストを作成することです。
活かせそうなものはそのまま面接でPRできます。一方で足りないことを書く際の心構えとして、ぜひ「できないこと」ではなく「やること」のリストを作る感覚で臨んでください。いまはできなくても全然OK。できないこと、ではなく「なにをすればできるようになれるか」という視点で実際に書き出すとわかりますが、そこに書かれてあることは見方を変えれば、これから自分ができるようにならなければならないToDoリストそのものなはずです。これは面接場面でもとても有効なアプローチです。
得体の知れない自信をもつことも大事ですが、活躍できるようになるためになにをすればよいか、いまの自分に不足していることを自覚しちゃんと語れるようにすることで、面接官はそれを本気度と意欲として受け止めてくれます。
次回は6番目「メンタル不全による不安」と7番目「他にないか不安」について書きます。