業界トレンド
次世代医療ロボットの需要とメリット~手術ロボットの開発に求められるエンジニアとは~
こんにちは。メーカー専門の転職エージェント「タイズ」です。
世界で開発が激化する次世代医療ロボット。日本は市場シェアを獲得できるのか。今回は、手術ロボットについて需要やメリット、開発に求められるエンジニアなどについて解説します!
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目次
1.医療ロボットとは
2.ロボットによる手術のメリット・デメリット
3.手術ロボット「ダヴィンチ」
4.手術ロボットの未来
5.医療ロボット市場推移予測
6.手術ロボットの今後の展開
7.日本の医療ロボット開発について
8.医療ロボットに携わる魅力とは
医療ロボットとは
手術支援ロボット | 医師がモニターに映し出される3D画像を見ながら、コントローラを使って、ロボットの手を動かして、手術を行うロボットのこと |
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調剤支援ロボット | 薬品の選択・秤量(秤で重さをはかる)・調合・配分・分包などの作業を自動で行うロボットのこと |
ロボット技術を活用して医療業務を支援する医療ロボットは「手術支援ロボット」と「調剤支援ロボット」の大きく2つに分けられています。
「手術支援ロボット」は医師がモニターに映し出される3D画像を見ながら、コントローラを使って、ロボットの手を動かして、手術を行うロボットのことです。
「調剤支援ロボット」とは、薬品の選択・秤量(秤で重さをはかる)・調合・配分・分包などの作業を自動で行うロボットのことです。
そして今、大きな注目を集めているのが手術支援ロボットなのです。
ロボットによる手術のメリット・デメリット
ロボットによる手術をする際のメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
【患者にとってのメリット】
- 手術の際の切開は、ロボットの機械を通す最小限の穴を数か所開けるだけなので、傷口が小さくてすむ
- 出血量・輸血量も少なくてすむ
- 手術時間が短いので、麻酔量も少なくてすむ
- 術後の回復が早く、入院期間が短い
【医師にとってのメリット】
- 狭い部位、深い部位の縫合が行える
- 人間には不可能な角度に機器を曲げて執刀できる
- 視野が非常に広く、従来の10~40倍の視野を得ることができる
- 手振れ防止機能が付いているので手の震えによるミスを防げる
デメリット
【患者にとってのデメリット】
- 費用が高価
- 緊急時の対応がしにくい
【医師にとってのデメリット】
- 慣れるまで多くの経験が必要
- 機器の購入・維持コストが高い
手術ロボット「ダヴィンチ」
今、日本でも手術ロボットは急速に導入が進んでいますが、そのほとんどが米インテュイティブ・サージカル社の「ダヴィンチ」という機種です。全世界で4500台以上が納入され、日本でも約300台が納入され、世界のトップシェアを誇っています。
ただし、「ダヴィンチ」が持つ大部分の技術特許が2019年に切れるため、世界中の企業が手術ロボットの開発に力を入れています。
日本の企業や研究機関などが開発を進めており、世界市場のシェア獲得を目指しています。もともとロボット技術では、日本は産業用ロボットの世界シェアのトップであり、内視鏡をはじめとする医療機器でも高度な技術を持っています。世界トップクラスのロボット技術と医療機器技術、さらに世界水準にある医療界もバックアップして、世界市場を席捲できるような手術ロボットの実現を目指しているのです。
手術ロボットの未来
医療ロボット市場推移予測
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、国内の医療ロボットは2020年346億円から2035年の948億円と約3倍近くに拡大すると予測しています。
また、世界市場では2018年では6.8兆円、2023年には17.8兆円、2030年には20兆円に成長すると予測しているレポートも出されており、国内外とも大きな市場へと拡大する有望な産業となっています。
手術ロボットの今後の展開
今後、ロボットによる手術が主流になるだろうと
政府は2016年に、「医療機器の研究開発及び普及促進に関する基本計画」(国産医療機器の開発を加速させ、輸出拡大を目指す計画)の中で、重点5分野の一つに「手術支援ロボット」を上げています。
また、グーグルの親会社アルファベットとジョンソンエンドジョンソンが新会社を設立し、AIを活用した新しい手術ロボットの開発に乗り出していると言われています。他にも、心臓病のカテーテル治療用、眼科手術用、脊髄手術用、脳外科手術用、整形外科手術用、人工関節手術用など、特定の疾患に特化した新たな手術ロボットなども次々と開発され、医療ロボット市場は非常に活発に動いています。
日本の医療ロボット開発について
メディカロイド | 検体検査装置大手のシスメックス社と産業用ロボットメーカー川崎重工業社の共同出資により設立 |
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リバーフィールド | 薬東京工業大学・東京医科歯科大学発のベンチャー企業 |
A-Traction | 国立がん研究センター発のベンチャー企業 |
日本では大学や研究所、ロボットメーカー、医療機器メーカーなどが協業する合弁会社が設立され、これまでに培ってきたロボット技術、医療機器開発、医療・研究などのノウハウ・スキルを組み合わせ、新たな手術ロボット開発に挑んでいます。
メディカロイド
検体検査装置大手のシスメックス社と産業用ロボットメーカー川崎重工業社の共同出資により設立。川崎重工業社が得意とする細かい関節によって、アームが滑らかに動くロボットを開発中。
リバーフィールド
東京工業大学・東京医科歯科大学発のベンチャー企業。装置は出資会社でもある東レエンジニアリングが受託製造している。空気圧によって感触が手に伝わる機構を採用し、ダヴィンチの半額程度の価格で販売を目指す。
A-Traction
国立がん研究センター発のベンチャー企業。内視鏡手術の経験を活かし、腹腔鏡手術支援ロボットを開発。ダヴィンチの約10分の1の価格での販売を目標にしている。
【国産初の手術ロボット開発を目指すメディカロイド】
株式会社メディカロイドは、ロボット技術を保有する川崎重工業株式会社と、医療用検査機器の技術を保有し、医療業界に幅広いネットワークを持つシスメックス株式会社の両社出資により誕生しました。社名の語源は、Medical + Androidでつまり医療用ロボットです。メディカロイドは2020年に発売予定の手術支援ロボットを開発中です。3D、スケーリング、多関節、手ブレ防止などダヴィンチとほぼ同じ機能を備えています。
また、川崎重工が得意とする関節部分が細く、軸が多いアームを使うことで、しなやかに曲がり、滑らかに動くロボットとなるとされています。
さらに産業用ロボットの世界に送り出してきた川崎重工業には世界中にサポート・サービス拠点を持っており、納入後のサポート体制も万全。そこにシスメックスの持つ販売力やヘルスケアのノウハウが加わることで、世界を相手にする事業として大きく成長する可能性は十分にあると考えられます。
医療ロボットに携わる魅力とは
医療ロボット業界では、ダヴィンチの特許切れを合図に、様々な新技術や新たなロボットが次々と世界中で登場してくる可能性が高くなっています。
日本では産業用ロボットでは世界トップシェアを誇り、医療機器でも世界トップの技術力を持っています。さらに医療水準も世界レベルにあり、日本にとって、医療ロボット分野は世界シェアを獲得できる可能性の高いフィールドです。
医療ロボット分野で働くことで、これから世界に通用する日本の新しい産業育成に関わっているという大きなやりがいを感じられると思います。
さらに少子高齢化による医療スタッフの不足、医療過疎地や大災害時の遠隔手術など、社会課題の解決にも貢献するという実感を得ることのできる仕事になるはずです。