企業インタビュー
[ 株式会社クボタ ]
社会課題の解決にチャレンジするクボタの人財とは
(左から、株式会社クボタ人事部採用室 キャリア採用企画課長 兼 株式会社クボタスタッフ キャリア採用課長 相原健志様、株式会社クボタ 人事部 採用室長 猪野 陽一様、株式会社タイズ 顧問 広岡 栄志、株式会社タイズ 執行役員 青木 良太)
タイズは長年にわたり、株式会社クボタ(以下、クボタ)の中途採用をご支援させていただいています。今回は、タイズの創業者である顧問 広岡と執行役員 青木より、クボタの人事部 採用室長 猪野様、相原様に、転職市場動向、事業や企業文化に紐づく採用戦略についてお伺いしました。
猪野 陽一様/株式会社クボタ 人事部 採用室長
社会を支え貢献できる会社で働きたい」と思い、クボタに新卒で入社。
本社や複数の工場で人事部門を経験。財務、広報も経験され、現在は、人事部採用室にて
新卒・キャリア採用に従事。企業理念・ビジョンへの共感と候補者の想いに寄り添った「On your side」の採用に取り組んでいます。
相原健志様/株式会社クボタ人事部採用室 キャリア採用企画課長 兼 株式会社クボタスタッフキャリア採用課
約15年間、人材サービス業界にてご経験を積まれた後、2015年に関連会社のクボタ スタッフに入社されました。現在はクボタにて、キャリア採用を中心に関連会社の新卒採用の支援や人に関わる 部分などに取り組まれています。中長期な視点も持ちながら、良い採用を実現するための取り組みを行われています。
01. 【2024年】メーカー転職市場の分析
転職しやすくなった今、企業も選ばれる時代に
広岡)メーカー業界でも売り手優位な転職市場が続いていますが、クボタではどのように転職市場を捉えていますか?
相原様)数年前と比べると、転職のハードルはだいぶ下がっているんだろうなと、とても強く感じますね。メディアでも積極的に転職に関するPRなど打たれていますが、転職を自分のキャリアを伸ばす機会として捉えて、活動されている方が多いという風に思います。
そういった転職市場の変化に応じて、私たち自身も広報の仕方や面接の対応などを変えていかないといけないなと日々感じています。 また、選ばれる会社になるためにも、情報発信などは求められていますので、強化していかないといけないなという想いを非常に強くもっています。
広岡)そうですね。中途採用の市場が活性化して適材適所がうまく進むことは社会全体にとって良い傾向かと思います。欲しいターゲットを採用するためには、企業側にも変化する姿勢が求められていると思います。
ニーズの強いIT職の採用について
広岡)昨今、IT職種はニーズが強い一方で人財は不足している状況です。いくらIT人財を採用したいと言っても、従来の採用基準で採用活動するんだという意見もあれば、 それではなかなか採用できないという意見もあるなど、 対応の変化が難しいという企業様も実際にありますね。
相原様)IT部門の方ほど、事業や製品への興味関心を持っていただきたいという想いは、面接官の中でも強いです。
例えば生産管理システムであれば、工場で働いている関係者とすり合わせていく必要があるのですが「このような方たちがどういう想いでモノづくりしているか」に共感できないと、結局社内での対話も上手くいかなかったり、ある意味現場に押し付けるようなシステム導入の仕方になってしまいます。
応募者の方に対しては、どういう想いで事業会社で働くのか、それがなぜメーカーなのか、なぜクボタなのかという点は常に確認しています。それが採用の判断基準の1つになっています。もちろん、その他にも技術レベルなどの経験、スキルも含めて判断しています。
広岡)IT人財がIT業界だけでなく、メーカーなどの事業会社でも活躍するというのは、経済的にも効果があると考えています。IT業界を好む方が多い状況ですので、事業会社で働くことの意義を、まだまだ微力ですが我々としてももっと伝えていきたいなという想いは非常にあります。
相原さんがおっしゃっていた通り、会社や事業のことを理解して、それをよくするためのIT技術なので、そこが切り離されてしまうと、何のためにそこで働くんだということになり ますよね。ITは会社や事業をよくするための技術という大きなトレンドがまだまだできていないと感じます。タイズでもITについてメーカー各社に取材をさせていただく機会を通じて、もっと上手く魅力を伝えていき、事業会社×ITのトレンドをつくる一端を担っていきたいと考えています。
コロナ前後で採用数や手法の変化
青木)メーカー転職市場では、コロナ発生直後はコロナ前と比較して、求人数が約60%も減少しました。一方、2023年以降はコロナ前の求人数を上回る推移で増加傾向にあります。クボタではコロナ前後で何らかの変化はありましたか?
猪野様)確かに、世界各地の工場が一時的に操業を停止する危機もありました。一方で、北米では巣ごもり需要に伴いガーデニングや芝刈りに用いる小型トラクタ、小型建設機械のニーズが拡大するということもあり、事業成長の一助となりました。
コロナ禍において、当社の食料・水・環境に関わる事業が、社会を支えるエッセンシャルビジネスとして認識されたこともあり、一定の事業量はあり採用も継続してきました。
青木)事業としては、航空業や飲食業のような大きな影響や変化はなかったのですね。採用の現場の方はいかがでしたか?
相原様)オンライン面接しかできなくなったことが一番の変化でした。今でこそ慣れましたが、当時は懐疑的な面もあり、対面にこだわる部門とのコミュニケーションも発生していました。この辺りの変化に対応していくというのが、当時は1番大変だったんじゃないでしょうか。採用数自体は伸びていたので、なんとかこちらが変わっていくしかないというような状況でした。
アフターコロナのメーカー業界の動き
猪野様)当時ロックダウンなどもありましたが、他社メーカーも含めて業界全体の動きはどうだったのでしょうか?
広岡)確かに求人数は減りましたが、かなり早く回復していました。生活様式や働き方は急激に変わったのかもしれませんが、製品が使われているのか、メーカー業界を取り巻く事業環境は、意外に変わらないなというのは感じられました。先ほどの芝刈り機の例もそうかもしれませんね。
とはいえ、生活様式や働き方が変わった影響で、世界の技術革新のスピードが益々速くなっています。それにより、メーカー各社の業績は概ね好調で、中期計画もポジティブな事業推進の話しが多く、結果として求人の幅や量が増えるなど、高水準での求人状況が続いています。
猪野様)在宅勤務が始まったりと働き方が変わったので、育児や介護など様々な事情など、時間の使い方の柔軟性が少し上がったというところは、世の中全体を通してあるかもしれないですね。
広岡)選考がオンラインにシフトされたことで、転職活動がしやすくなったというのも、転職活動のハードルが下がったひとつの背景ですね。対面の場合は、最低でも半休、場合によっては1日有給を取るというのが普通でしたが、今は面接の時間だけ調整すればいいので、選考スピードが早くなったり、応募がしやすくなりました。これは非常に良い変化だと思います。
02. 長期ビジョンの実現にむけて
クボタの長期ビジョン「GMB2030」について
猪野様)この長期ビジョンGMB2030を分かりやすく言いますと、食料・水・環境に関わる既存の製品やサービスを拡充していくということと、新たなトータルソリューションをグローバルに提供しようということです。
GMB2030とは
長期ビジョン「GMB2030」とは、深刻化する社会問題に向き合い、これからも持続可能な日々の暮らしを守るために、クボタの果たすべき役割とクボタグループ全体で取り組む指針を表すものです。
めざす姿として、「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」を掲げられています。
このめざす姿には次のような意味が込められています。
「豊かな社会と自然の循環にコミットする」
創業から130年以上にわたり、食料・水・環境の分野において、事業を通じて社会課題の解決に貢献してきたことを再認識し、これからも豊かな社会と自然の循環を支えていきます。
新しい取り組みや、大きな変革をしていくところですので、スピーディーかつ的を射て進めていくには、キャリア採用は非常に重要だと考えています。なぜなら、専門性の高さや業務経験の豊かさというのは、非常に必要な要素ですので、新卒採用だけでなく、即戦力であるキャリア採用の方をお迎えしたいと考えています。
水環境インフラを支える
広岡)最近は水環境事業での採用数が増えているそうですね。どのような方を採用していきたいですか?
猪野様)従来は農業機械の方が採用数が多かったのですが、最近では水環境の採用数も増えています。長期ビジョンのGMB2030にもありますが、水資源や廃棄物の循環というのは、重要な考え方です。この循環を促進するソリューションの実現に向けて、例えば、水質汚染には弊社のMBR技術で水の再生利用に取り組んだり、廃棄物には溶融技術やリン、メタンガスの回収技術で、資源化して循環するという取り組みをしています。
あと水環境の課題として、高度経済成長期に敷設されたインフラ製品・施設の老朽化や、運営スタッフの方々の高齢化も挙げられます。こちらに関しては、既存製品の更新だけでなく、IoT技術を利用して機器を遠隔で監視、診断、制御できるプラットフォーム作りというのを進めています。だから、製品開発・設計やIT技術など高い専門性や経験を持つ人財はぜひ採用していきたいと考えています。
最近は発注方式も変わっています。従来の単品機器売りから、オペレーションやメンテナンスなど維持管理も含めた発注方式に変わってきています。エンジニアとしてそのような企画や運営ができる人もこのような取り組みにマッチしているかと思います。
グローバルな事業展開
猪野様)弊社の売上高3兆円のうち、約79%が海外です。その要素として、農業機械や建設機械、エンジンなどの海外事業の伸びは非常に大きいですね。農業機械は、トラクタ、コンバイン、田植え機など幅広い製品群を持ち、各地域のニーズをとらえて事業展開を進めています。建設機械は、小型の領域で北米、欧州を中心に非常に伸びてきています。
広岡)建設機械が北米や欧州を中心に伸びている背景について教えてください。
猪野様)建設機械は1974年から量産化が始まり、今年で50周年を迎えるぐらいの歴史のある事業です。90年代後半から2000年初頭にかけて非常に厳しい時代を乗り越えて、徐々に北米や欧州を中心に、成長してきたという歴史があります。
北米や欧州で成長してきた背景として、ミニバックホーに加えコンパクトトラックローダ、スキッドステアローダなど地域のお客様に求められる製品を開発し、ラインアップを拡充してきたというのが挙げられます。
建設機械の領域は求められる人財が、製品開発、設計、製造・生産技術、販売、アフターサービスと非常に幅広いのが特徴です。
広岡)建設機械事業において、新しい技術を取り入れるためにどのような人財を採用したいと考えられていますか?
猪野様)事業量が伸びており、技術的には製品開発や設計にあたり、機械系に加え電気電子系や情報系の人財も求めています。
03. 社風や企業文化から紐解く求める人財
企業理念や社風からみるクボタの魅力
広岡)クボタは非常にフラットで自然体で窮屈さのない社風だと感じています。採用では自社の文化や社風にフィットするかどうか、重視されていますか?
猪野様)そこはすごく大事ですよね。非常に高い専門能力があって、熱意があっても、何か違うなと感じることがあります。そこが企業理念や社風に通じるところじゃないかなと思います。
相原様)クボタの特徴として、人の温かさや優しさは皆さん口を揃えて言っていますね。たくさんの先輩社員が声をかけてくれたり、困っている時には自分の手と足を止めて助けてくれるような文化、風土があります。
窮屈さを感じないという背景のひとつとして、想いが社外に向いているからというのはあるかと思います。食料・水・環境の分野で社会課題に貢献するということが普遍的で、それを実現するためには、変わることに抵抗がなく、むしろ積極的に変わっていくべきだという考え方が根付いているのだと思います。
そういった意味でチャレンジすることは当たり前のことですね。その仕事は本当にするべきなのかちゃんと考えてねと上層部からも言われますし、これまでの仕事が全て正しいわけ でもないっていう考え方も常にあるかなと思います。
中途採用で入社した方が「クボタらしいやり方に染まれ」というメッセージを受け取ることはあまりないと思います。変化には非常にポジティブな環境、風土ですね。
事業を通じて社会課題の解決にチャレンジする人財
広岡)クボタで活躍される人財の特徴を教えてください。クボタにはどのような方が多いですか?
猪野様)やはり、事業を通じて社会に貢献したいという人がものすごく多いです。
今は海外の売上も非常に多く、右肩上がりに成長していますが、必ずしも良いことばかりだったわけではなく、苦しかった時代や厳しかった時代もありました。その中で、チャレンジして変化してきたという歴史があります。堅実な会社ではありますが、お客様に向き合い、お客様の周りで起きている大きな変化に対して、クボタ自身もどんどんチャレンジして変化しています。
弊社は事業を通じて食料・水・環境分野の課題解決していく会社ですので、そこに対して本当に熱い想いを持っているかというのが第一のポイントになると思います。
「環境に貢献したいです」「社会に貢献したいです」という想いをお持ちの方は比較的たくさんいらっしゃいます。ただ、弊社の場合は事業会社なので、やはり事業を通じてというところも1つのポイントと思います。
弊社は多くの製品を開発しているというのもあり、非常に「現場」を大事にしています。製品開発するときも営業担当だけが現場に行って、課題を技術者に伝えるだけではなくて、技術者もその現場に行って、製品あるいは使われてる環境そのものに対して変化も把握しながら、製品開発に生かして、製造、販売、アフターサービスしていくことが求められます。現場に入り込んでいく力がある方やお客様に対して真摯に向き合うことが自然にできる方、チームワークを尊重できる方はマッチしやすいです。
広岡)技術部門・管理部門も共通して大事にしていることはございますか?
猪野様)自部門だけでなく他部門のことも考えて、 一緒になって課題を解決するという姿勢は共通して大事にしています。一緒になって踏み込んでいかないと課題解決は難しいですよね。
クボタの社風や転職成功させるコツなど以下の記事で詳しく解説しています。 こちらもぜひご覧ください。
04. 今後の採用戦略とエージェントの役割
競争激化の状況における採用について
青木)各社の採用競争が激化している中ですが、今後の採用戦略についてどのようにお考えですか?
猪野様)今後の採用活動において、重要なポイントのひとつとして人財のマッチ度合が挙げられます。
そのためには、1人1人の想いを本当によく聞いて、応募者様の持っている専門性や仕事に対する熱意、今後のキャリアをどう考えているのかということに向き合って、その上で弊社のマッチするポジションをご紹介していくことが非常に重要になります。シンプルなところですが、徹底していくことが重要だと思います。
採用室でも議論しましたが、採用がどういう仕事かと言うと、「クボタの未来と応募者様の夢をつなぐ仕事」と思うんですよね。それをつなぐためには、やはり1人1人と真摯に向き合うことが重要なんじゃないかなと思います。
相原様)弊社側ですごく他社様をライバル視することは、過去も今もないかなと思ってい ます。なぜなら、それぞれに会社らしさや良さがあるからです。単に求人の条件面やアサインされるポジションだけで判断されるのではなく、アナログな価値観や社風の部分も判断材料のひとつになっていると思います。だからこそ、クボタらしさやクボタの良さをしっかりお伝えしていくことが、まずは重要だと思っています。
具体的には、直接的な情報発信と対話に注力していきたいと思っています。クボタに少しでも興味を持っていただいた方と長く繋がるために、直接、情報をできるだけ早いタイミングで届けることにこだわっていきたいです。
猪野様)世界の食料・水・環境分野の課題は年々大きくなっていると思いますね。そこに向き合っている会社というのを、方向性や事業、製品など具体的なものでちゃんと説明しなきゃいけないと思います。クボタの姿や目指しているものを、すべての方に正しく伝えていく必要がありますね。
タイズをはじめとした転職エージェントへの要望や期待する役割
青木)お伺いした採用戦略の実行に向けて、タイズなどの転職エージェントに対する要望や期待する役割をぜひお聞かせください。
相原様)タイズさんは担当者が変わっても、変わらない魅力があると感じています。具体的には、コミュニケーションが密であるというところですね。他のエージェントさんだと担当者によって変わることがあるのですが、タイズでは情報交換や共有が非常にタイムリーに行われて、情報が受け継がれていくというのは担当者が誰であっても変わらない部分だと感じます。年々採用数を伸ばしていただいている点も非常に大きな特徴だと思っています。
エージェントさんに求めることとしては、いわゆる転職の口コミサイトとかで収集してしまいそうな真偽がわからない情報などデジタルな情報だけでなく、実際に採用担当や各部門の責任者などと話していただく中で感じた部分を応募者様に伝えていただくいう動きを、1番求めていますね。
採用のトレンドがどんどん変化する中で、単にエージェントさんに任せるだけでなく、会社側が自ら新しいことに取り組んでいかないと良い方を採用できないです。我々が得意なこと、お任せした方が成果が出そうなことをしっかり相談し見極めながら、これからも転職エージェントとの連携を密にしていきたいところです。
青木)ありがとうございます。クボタには130年の歴史があり、現在グローバルに活躍され、さらに発展していかれることは並大抵のことではないと感じています。過去の歴史から現在の考え方や価値観、今後のビジョンまで、余すことなく応募者様に伝えていかないといけないと改めて感じています。タイズはその役割を担うエージェントとして、より一層密にコミュニケーションを取らせていただきたいと思います。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
05. 株式会社クボタ
1890年の創業以来、食料・水・環境分野の課題解決に挑戦している株式会社クボタ。農業機械、エンジン、建設機械、水環境機器等の開発・製造、水処理や焼却プラントなど事業領域は幅広く、世界各地域の人々の暮らしを支え続けている。「美しい地球環境を守り、人々の生活を支えていく」という思いを込めた「For Earth ,For Life」をブランドステートメントとして、事業を通じて地域社会の課題解決にチャレンジしています。
世界中の食料・水・環境問題を解決するために、現地のニーズに合わせてグローバルに事業を展開しています。その結果、ビジネス展開国数は120を超え、海外売上比率は約79%となり、世界各地域の課題解決に貢献をしています。