企業インタビュー
[ 株式会社村田製作所 ]
村田製作所がキャリア採用を強化するワケとは?事業の方向性や求める人物像について対談
(左)株式会社村田製作所 コーポレート本部 ESG・HR統括部 人材開発部シニアマネージャー 奥田 裕之様
(右)株式会社タイズ 顧問 広岡 栄志
今回は、タイズの顧問 広岡 栄志より、株式会社村田製作所人材開発部シニアマネージャーの奥田 裕之様に、村田製作所がキャリア採用を強化している背景や事業の方向性など、根幹に迫る対談を行いました。
村田製作所におけるキャリア採用の重要性や、今後の方向性、採用したい人物像、トップを走り続ける理由などを伺いましたので、ぜひご覧ください。
01. 村田製作所とは
村田製作所は1944年の創業以来、エレクトロニクスの進化でさまざまな不自由を開放し、人々の夢の実現を推進してきました。
積層セラミックコンデンサやEMI除去フィルタではシェア40%、高周波インダクタでは60%、表面波フィルタでは50%など、世界トップクラスの企業です。
2024年3月期の売上高は1兆6402億円、営業利益率13.1%と圧倒的な高収益を実現しています。技術開発に積極的で、原材料から設備まで自社開発を行う自前主義を徹底し、世界初、日本初にこだわり、世にない技術、真似できない技術を追求する企業です。
02. キャリア採用を強化する背景や、トップを走り続ける秘訣とは
キャリア採用数増加の背景について
広岡)ここ数年はキャリア採用数がかなり増えていますが、増えている背景を教えていただけますか。
奥田様)当社か掲げるVision2030という長期ビジョンの中で、社会価値と経済価値の好循環を目指して、いろんな事業に対して施策を打っています。当然必要となってくるのが「人」なんです。今と違うことや新しいチャレンジをもっともっとやっていくためには、今いる人材だけでは足りません。そのため、新卒の育成や、社外で様々な経験を積んだ人材に加わっていただくことで、弊社のビジョンの実現に向けたさらなる加速を進めていきたいと思っています。
広岡)過去に比べて、より採用人数が増えているというのは、領域の広がりや事業のスピードの加速によるものなのですね。
奥田様)そうですね。これまではお客様の課題を解決して、顧客価値を高めていくことがミッションでしたが、それに加えて社会課題解決を経済価値に転換していくことが、新しいビジョンの中でも重要なテーマになっています。これまでよりも課題解決の範囲がより複雑になり、かつ難度も上がっています。このミッションを実現するために、長期的な目線で人材も獲得していく必要があると考えています。
採用を強化している事業について
広岡)既存事業や新規事業がある中でそれぞれ採用ニーズがあると思うのですが、まず既存のところでいうと、強化したい分野はあるのでしょうか?
奥田様)当社は成長戦略の軸として3層ポートフォリオ経営※というのを謳っております。この事業ポートフォリオをしっかりと回した上で、人材の再配置や強化を進めていこうとしています。3層目である「新規ビジネスモデル創出」を実現するために、モノ売りではなくコト売りのビジネスにも強化をしていこうと考えています。
※3層ポートフォリオ経営:「標準品ビジネス」を1層目、「用途特化型ビジネス」を2層目、「新たなビジネスモデル創出」を3層目とした3層構造のポートフォリオを用いた、村田製作所独自の経営手法
参考:村田製作所┃成長戦略① 基盤事業の深化とビジネスモデルの進化
広岡)新しい領域と元々強い領域、キャリア採用のバランスはいかがですか?
奥田様)当然、新しい領域に人材を強化していきたいのですが、既存の領域を強化しながら新しい領域に人をシフトしていくという流れで進めております。バランスを考えながら進めていますね。
今、積極的に強化しているのはITやDXの領域です。ここに関してはかなり多くの人材を採用しています。コンデンサや受動部品など既存の領域ももちろん採用して、基盤を醸成しながら新しい領域も強化していきたいと考えていますね。
トップを走り続けている秘訣は、社是の浸透度の高さ
広岡)コンデンサや受動部品などの既存領域においても競争は激化していると思いますが、御社はずっとトップを走っておられますよね。その秘訣などはありますか?
奥田様)特にコンデンサ、MLCCの領域はグローバルでも強い領域です。実は、危機感を持っている領域でして、いつ追いつかれるかわかりません。だから、自分たちは技術の最先端をキャッチアップし続けるんだという思いで、従業員もマネジメント層も仕事をしている点が、トップを走り続けている理由の1つですね。
あとはキャリア形成の仕組みや考え方が長期目線なんです。育成に手間もコストもかけていますので、成長できる感覚を持ってもらえるのもあると思います。そこが良いサイクルになっていることが、ムラタの強さの源泉を生み出している1つの理由かなと思います。
広岡)私が思うに、御社は全社員に社是の考え方が相当浸透していると思いますが、そこはどのような工夫をされていますか?
奥田様)私も実は他社から来て1番感じたのが、社是、経営理念の浸透度の高さになります。なぜこんなに浸透しているのか、客観的に考えてみたんです。やっぱり社是と仕事との意味づけをどれだけ個人が考える機会を持てるか、社是に基づいた判断や意思決定が行われていることを実感できるか、日常の業務の中で社是がいかに大事にされているか感じる機会をどれだけ持てるか、というのが大事なのかなと思います。
ムラタは企業文化の再生産力が高いと、私はよく言っているのですが、 ムラタの文化が組織の中でどんどん再生産されていく状態ができてるんですよね。それによってキャリアで入社された方も社是の意味を理解して、こういう風に実践していくんだというのを仕事を通じて理解できるという機会を得られています。
広岡)仕事の中で社是を感じる場面というのは、具体的にどんな場面がありますか?
奥田様)意思決定の判断がメンバーにも分かるような形で行われるのですが、それが仕事の中で社是を感じる場面のひとつですね。何か不具合や課題が発生したときに、1つの事業だけではなく全社一丸となって助け合って、最終的に学びにしてこれからの教訓につなげる風土があります。これはムラタのカルチャーが為せるものだと感じましたね。
広岡)直接関係のない部署の方も自分ごとと捉えて協力されているのですね。
奥田様)ムラタは助け合いという文化が非常に浸透していますね。やっぱり組織の総合力だと思うんですよ。1人のスーパーマンがイノベーションを起こすのではなくて、組織みんなでイノベーションを起こしています。それが強さに繋がってますね。
広岡)私もイチ経営者として、いかに文化や風土という目に見えないものを浸透させるにはどうしたらいいか、よく考えています。規定に書いたり、あるいは壁に貼ったりしたからといって、浸透するものでもないし、評価制度だけで変わるものでもないし、非常に難しいトピックですよね。
奥田様)弊社の場合、創業記念日が10月にあるのですが10月を社是月間としているんですよ。日常的に社是に基づいて取った行動や活動について、振り返りをして言語化してみんなで語るという機会を設けていますね。
広岡)想像するに、御社に入ってこられる方はそういう点も含めて魅力に感じて、入社されていると思いますし、入社された後もこの文化を誇りに思っておられるのでしょうね。
奥田様)そうですね。社是に共感していただける精神が含まれているかどうかというのは大事なんだと思いますし、実際にそういう社員が多いと思います。
広岡)部下と上司あるいは同僚同士でも、日々の会話でそういうことがなされているのでしょうか。
奥田様)社是について語ろうというわけではなくて、例えば技術のディスカッションとか、何か物事を決める時にも社是が背後に垣間見えるという状態ですね。
広岡)創業者の方のお人柄や考え方が、創業時から現在に至るまで脈絡と受け継がれているのかなと感じたのですがいかがでしょうか。
奥田様)社員向けの研修施設に「ムラタ イノベーションミュージアム」※というのがございまして、創業者の創業時の想いや歩んできたムラタの歴史を学べる場があるんですね。誰もしないことをしようとか、三方よしなWin-Winの関係をつくって商売をしていこうという創業者のエピソードがあるのですが、そこがずっと繋がってきていると思います。
ムラタ イノベーションミュージアムの内観
※ムラタ イノベーションミュージアム:村田製作所グループ社員向けの教育研修施設。 創業75周年を機に、創業からの歴史や経営理念、大切にしてきた価値観を学ぶことにより、行動変容やイノベーションを促し、さらなる成長に繋げるための施設。
参考:村田製作所┃グループ社員の教育研修施設 「ムラタ イノベーションミュージアム」の開館について
村田製作所の「独自の製品」というモノづくりに対する考えの礎となったエピソードや、事業の方向性を決定することになったエピソードなど、創業時のことがわかる漫画もご用意されています。ぜひ下記よりご覧ください。
▶村田製作所創業者 村田昭ものがたりはこちら
03. 村田製作所で築けるキャリアとは
広岡)長く働いてもらうことを非常に大事にされていると思いますが、キャリア採用で入社された方の育成にはかなり力を入れておられるのでしょうか。
奥田様)ムラタはいろんな経験を通じて成長していただくことを大切にしています。私も実はジョブローテーションでいろんな経験をしているんですよ。人によるとは思うのですが、いろんな経験を通じて、次のステージへ成長していただくような機会を当然設けたいと思っています。それは本当に新卒だろうが経験者だろうが変わりはないですね。
広岡)例えば、入社してすぐに実務に入ってほしいといった企業様もある一方で、おそらく御社はそこに違いがあるのかなと感じますね。
奥田様)これまでの経験や、同じようなやり方ができるかどうかなど、個人に向き合った上で仕事のアサインを決めていくことにはなります。あと、結構な確率で海外の経験は積めるんじゃないかなと思います。赴任というパターンも含めて、例えば生産技術であれば海外の工場に立ち上げで行く等の経験も積める確率は高いです。また出張した後、そのまま海外駐在というパターンもあり得るかと思います。もちろん、ご本人のキャリアプランの中で海外ではなくて国内中心で働きたいという人もいると思います。どういうキャリアを積んでいきたいかというのを考えた上で、先の先ぐらいまで話をしながら、決めていくようなイメージです。
広岡)どういう風になりたいかを考えた上で、次どうしようか、その次どうしようかというふうにキャリアを考えられているのですね。
奥田様)そうですね。キャリアに対しての会話がどちらかというと、長期の目線に基づいた会話になるケースが多いかなと思いますね。 弊社は転勤が多いイメージがあるんですけど、無理やり決めることはありません。ご本人のライフプランやキャリアプランに基づいて、本当にその人のためになるのか、いわゆるwill、can、mustの領域で会社のmustと本人のwillとcanをすり合わせできているか意識した上で異動、転勤していただくケースが非常に多いかなと思います。無理やりに転勤させることはまずないですし、やっぱり大事なのはご本人の成長にしっかりと繋がるかどうかですね。
広岡)転勤もそうですし、先の先はどうなりたいんだという話し合いの機会は、定期的にあるのでしょうか。
奥田様)正直いつでもしてくださいと話はしているのですが、少なくとも、年3回ある人事考課のフィードバックのタイミングで、評価だけではなくキャリアの話もしておりますし、上長がしっかりと話を聞く準備はできています。
04. 今後のキャリア採用の方向性や、村田製作所が求める人材とは
広岡)直近の足元の採用計画はいかがでしょうか。
奥田様)今期も変わらず採用意欲は旺盛でございます。今期も始まったばかりですが、御社に多くの方をご紹介いただき、本当にありがとうございます。 今期は特に、DXやITの領域、コンデンサなど主要な技術の領域(具体的に)は引き続き強化したいポイントになっています。例えば電子デバイスの経験が少なくても、近しい経験をした方であるとか、製造業でDXの経験がある方はぜひご応募をいただければと思っています。
広岡)全社共通して採用したい人物像はどのような方でしょうか。
奥田様)先ほど申し上げた通り、1人のスーパーマンではなく組織で何かを成し遂げるというのは、やはりすごく大切にしていますので、人とのネットワークを大事にして物事を成せる能力があるかというのは非常に重要です。
弊社が強化したいのが自律分散型経営で、Vision2030を実現していくためには、自律性と進歩性と全体性を兼ね備えた人材が必要だと考えています。つまり、与えられたことだけをするのではなくて、自分で考えて自分で決めて、それを影響力を持って周りに発信できる方や、いろんなところにアンテナをはって、いわゆるコンフォートゾーンから足を踏み出して様々なチャレンジができる方にはぜひ来ていただきたいです。
その中でも大事なのは全体性です。広い視野をもって俯瞰して、どうすれば全体として1番大きな付加価値を生み出せるのかを見た上で、例えば組織同士をちゃんと繋いでいけるかや、組織を超えて最適な解に持っていけるとか、会社・業界全体を見て判断できる方を求めていますね。
そんなスーパーマンに急になれる方はいないかもしれないですが(笑)。ムラタに入社したからにはそうなっていただけるように育成し、成長していただきたいと考えています。何かしらの強みがあって、学ぶことができる方はムラタが今後必要とする人材に当てはまるんじゃないかなと思いますね。
広岡)部署によって求める特性や人物像も変わってくるのでしょうか。
奥田様)変わってくる部分は、当然、専門性の部分になります。これは当たり前の部分かなと思いますが、いわゆる3層目の領域と言われる新規事業においては、ムラタにはない多様な視点を求めている職場もございますので、今のムラタにはない経験や視点を持っている方にはぜひエントリーいただきたいですね。
広岡)キャリア採用の方なので、やはり新しいことに挑戦してもらいたい、どんどん様々な仕事を生み出してほしいと考えておられると思いますが、一方で、これ以上は認められないなどのOBゾーンはありますか。
奥田様)やはり、ムラタは1人のスーパーマンではなくて、組織で仕事をして成果を出していく会社なんですね。多様な視点や意見をお持ちでも、組織としての成果につなげられない、つまりコミュニケーションが取れないとか、自分勝手に動いて周りのことを考えないというのはOBゾーンになってくるかと思います。周囲とコミュニケーションを取りながら、協調性を持って仕事ができるというのは大事だと思います。
05. 求めている方を採用するための取り組みや手法、課題について
広岡)採用人数が増えている中で、御社が求める方を採用するために行っている取り組み や、もっとこうしていきたいなどの課題やテーマがあれば教えていただけますか。
奥田様)弊社はエージェント様経由で採用に至るケースが1番多いんですね。タイズさんにもご協力いただきまして、求人を見直す活動をしています。弊社の求人は、弊社特有の言語を使っているケースもあるんですね。それを分かりやすい言葉に上手く変換して、分かりやすい求人に見直していく活動をしています。特にタイズさんにはご協力いただき、かなり成果につながっていると思います。
あと、弊社は非常に真面目な面接官が多くて、質問攻めにしてしまうケースが多いです。候補者様が面接で成し遂げたいことを、果たせるような場にしていこうと取り組んでいます。候補者様がムラタはどんな会社なんだろうというのを、理解してもらえるような場に変えていきたいです。
06. 応募希望者へメッセージ
広岡)応募希望者にメッセージをお願いします。
奥田様)人となりをしっかり理解したいと思っていますが、やはり大事なのはどういう行動を取られてきたのかということです。自分が取ってきた行動とその行動の意味をしっかりと語れるかどうかは非常に大事ですね。
例えば、これまで1番大変だったことを聞いたりします。自分が何をやって、そこからどのような学びを得たのか言語化して語っていただけると、こちらが重視している要素を判断しやすくなるかなと思います。
07. 今後タイズに期待すること
広岡)弊社タイズも含めてエージェントに対する要望や期待などございますか。
奥田様)タイズさんは弊社の理解度も非常に高い状態にあるかなと思っています。エージェント様あるあるなのが、担当者が変わると急に弊社への理解度が下がるということがあるのですが、タイズさんはそんなこともなくてうまく社内でノウハウ共有されているなという印象がございます。その盤石な体制は引き続き維持していただくとともに、ぜひ弊社の理解を高めるような対話の機会を増やしていただければと思っています。
先日もタイズさんから新しいご担当者の方がいらっしゃって、弊社のイメージを伝えられて理解してもらえたと感じられるいい機会でした。教育などの仕組みがしっかりされているんだろうって感心していたんです。
広岡)ありがとうございます。弊社内では、まずは企業理解が大切ということを連呼しており、実際に勉強会もよくやってますので、御社にもいろんなことを教えていただきながらより理解を深めていきたいなと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。