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[ 制御系エンジニア ]
制御系エンジニアとは?仕事内容や年収、組み込み系との違いを解説
こんにちは。メーカー専門の転職エージェント「タイズ」です。この記事では制御系エンジニアについて解説します。エンジニアの仕事に興味がある方の中には、「制御系エンジニア」が気になっている方もいるのではないでしょうか。
この記事は約15分で読み終わります。
制御系エンジニアは電化製品の制御にかかわる業務を担当し、製品が問題なく稼働するために重要な役割を担っています。
本記事では、制御系エンジニアの種類や組み込みエンジニアとの違い、仕事内容などを解説します。平均年収ややりがい、必要なスキルなども紹介しているので、制御系エンジニアを目指す際にぜひ参考にしてみてください。
―目次―
1.制御系エンジニアとは
2.制御系エンジニアと組み込みエンジニアの違い
3.制御系エンジニアの仕事内容
3-1.要件定義
3-2.システムの設計・開発
3-3.システム導入・アフターフォロー
4.制御系エンジニアの平均年収
5.制御系エンジニアのやりがいと大変なところ
5-1.やりがい・魅力
5-2.大変なところ・厳しさ
6.制御系エンジニアに求められる6つのスキル
6-1.組込みスキル標準(ETSS)
6-2.プログラミングスキル
6-3.制御やハードウェアなどの専門知識
6-4.制御理論に関連する数学的知識
6-5.根拠のある要件定義や提案ができる論理的思考力
6-6.メンバーと関係を築けるコミュニケーション力
7.制御系エンジニアで活用できる資格
8.制御系エンジニアの将来性
9.制御系エンジニアのキャリアパス・キャリアプラン
10.制御系エンジニアとしてシステムやソフトウェアを開発しよう
制御系エンジニアとは
制御系エンジニアとは、ロボットや家電などの機器に組み込む制御システムの設計・開発を行う職種です。
ロボットや家電などの機器が動くためには、制御システムが欠かせないため、さまざまな製品の開発で活躍しています。とくに、新しく製品を開発したり、細かな調整が必要になったりする製造業では需要が高いです。
IoT(インターネットを経由して制御する技術)の発展に伴い、制御系エンジニアの需要は今後も高まると予想されています。
制御系エンジニアと組み込みエンジニアの違い
制御系エンジニアと似ているのは制御設計エンジニアと計測制御エンジニアだけではなく、もっとも違いに気をつけたいのは組み込みエンジニアです。
組み込みエンジニアは、制御に必要なシステムを機器に組み込む工程を担当します。機器が正常に作動するように、制御への影響がない状態で正確に組み込むのが重要な役割です。
制御系エンジニアは、組み込みエンジニアが取り扱うシステムを設計・開発します。役割は異なりますが、制御系エンジニアと組み込みエンジニアは連携する場面が多いのが特徴です。
組み込みエンジニアの仕事内容や活用できるスキルなどは以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
組み込み系エンジニアの仕事内容|活かせるスキルや平均年収は?
タイズの強み
転職支援実績
制御系エンジニアの仕事内容
制御系エンジニアの主な仕事内容は、以下の3つです。
- 要件定義
- システムの設計・開発
- システム導入・アフターフォロー
システムの設計がメインと思われがちですが、前提となる要件定義も、導入後のアフターフォローも欠かせません。
それぞれの仕事内容を詳しくチェックしていきましょう。
要件定義
制御系エンジニアが手がける仕事の土台になるのが要件定義です。顧客とシステムに求める要件をすり合わせることで、具体的なシステムの設計・開発に進めます。
要件定義では、制御システムで何を行いたいか定めることが重要です。実現したいことを叶えられるか検討し、対応した要件を決めていきます。
漠然とした要望だった場合は、嚙み砕いてわかりやすく伝えたり、認識をあわせながら慎重に話し合いを進めたりすることが大切です。
システムの設計・開発
システムの設計・開発は、要件定義に沿って行います。すぐにシステムの開発に着手するのではなく、設計を重ねて詳細設計をつくるのが基本です。
大まかな設計を決めた後に、具体的なプログラミング案を計画していきます。設計をつくり込むほど、開発でつまずくポイントが少なくなるため、丁寧な設計が重要です。
開発では、詳細設計にもとづいてプログラミングをしていきます。ゼロから完成までひとりで行うことは少なく、チームで分担してシステムを構築するのが特徴です。
システム導入・アフターフォロー
制御システムの開発が完了したら、顧客に成果物を納品します。納品自体をシステム導入と呼びますが、納品に伴う仕様の説明や使い方のレクチャーなどの業務も含まれます。
制御系エンジニアは、システム導入後のアフターフォローも重要な仕事です。システムにトラブルが生じたり、カスタマイズが必要になったりしたときには、状況に応じて適切なサポートを提供します。
制御系エンジニアの平均年収
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト jobtagによると、制御系エンジニアが含まれる「システムエンジニア(組込み、IoT)」の平均年収は557.6万円です。
国税庁の「令和4年 民間給与実態統計調査」では、給与所得者全体の平均は458万円と発表しているため、制御系エンジニアの年収は平均よりも約100万円高くなっています。
タイズのデータでは、制御系エンジニアの平均年収は以下の通りです。
大手企業(正社員) | 中小企業(正社員) | |
20代 | 500 | 400 |
30代 | 650 | 530 |
40代 | 750 | 620 |
単位:万円
引用:タイズ経由で転職成功された方の実績(2023年度)
実際の年収は企業の規模や携わる案件などによって変わるため、平均はあくまで目安と理解しましょう。希望年収をイメージしたうえで、提示されている額を確認することが大切です。
タイズの強み
転職支援実績
制御系エンジニアのやりがいと大変なところ
制御系エンジニアに限ったものではありませんが、仕事をするうえでやりがいもあれば、大変なところもあります。
制御系エンジニアのやりがいと大変なところは、以下の通りです。
制御系エンジニアのやりがい | 制御系エンジニアの大変なところ |
|
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制御系エンジニアの魅力と厳しさを理解して、改めて就職・転職を考えてみましょう。
やりがい・魅力
制御系エンジニアのやりがい・魅力は、以下の3つです。
- 最新技術の普及により将来的な需要を期待できる
- 技術に触れる機会が多く成長につなげられる
- 設計・開発で携わった製品が世の中に流通する
現代はデジタル化が急速に進んでおり、生活の中にさまざまな機器があります。最新技術の普及でこれからも機器の需要は拡大すると考えられ、制御系エンジニアも長く必要とされていくでしょう。
仕事の中で最新技術を扱う場面もあり、専門性を高めていけるのも魅力です。スキルアップによってできることを増やしながら、より質の高いシステムを開発できるようになります。
また、制御システムの開発にかかわった製品は、普段の生活で目にする機会があります。店頭で見かけたり、使われている様子を目にしたりしたときに、やりがいを感じられるはずです。
オークラ輸送株式会社さまの設計統括部 制御部 部長を務める方は、仕事に以下のようなやりがいを感じられています。インタビューをもっと見たい方は、以下の記事をぜひチェックしてみてください。
Q.制御部の仕事の面白さはどういったところにありますか。
受注が決定した後に制御部に詳細な内容が届きますので、コストや納期を考慮しながら、いかにお客様の要望通りのものを用意できるか、というところが難しく、頭と工夫が求められる部署です。明確な答えがある訳ではないから難しいですが、そこが逆に仕事の面白さだと思います。いくらいい機械ができても、それを動かすのは制御です。もちろん、動かしてみて思い通りにならなかったということもあります。設計者にとって、「経験」というものは非常に大きいのですが、うまくいかなかった時に課内や部内で経験者の意見を聞きながら解決していきます。制御部は、ハード設計、ソフト設計の両方を一人が担当しなければなりません。全部を任されるからこそ、やりきったときの充実感はすごく大きいと思います。
大変なところ・厳しさ
「制御系エンジニアはやめとけ」と耳にすることもあり、以下のような大変なところ・厳しさがあります。
- Webエンジニアに比べて学習できる環境が少ない
- 人手不足によって設計・開発以外を担当する場合がある
- ハードウェアの問題に対応するリカバー業務が突発的に発生する
- 重要度の高いシステムを担うプレッシャーがある
スクールをはじめとしたスキルを学べる環境は、Webエンジニアに比べると少ない傾向があります。独学しなければならない部分があり、つまずいたときの解決策や応用スキルを習得する工夫などが必要です。
学習できる環境が少ないことから、制御系エンジニアは人手不足の傾向があります。企業に制御系エンジニアがあまりいない場合には、設計・開発以外を担当する場合があり、負担を感じるかもしれません。
ハードウェアに問題が起きたときには、対応を行うリカバー業務が突発的に発生する点もつらいところです。急な呼び出しや問い合わせが考えられるので、気を抜けない部分があるでしょう。
制御システムは機器の心臓ともいえるため、責任感のある仕事が求められます。大きなプロジェクトであるほどプレッシャーを感じやすいため、上手に精神面への負荷と付き合う必要があります。
制御系エンジニアに求められる6つのスキル
制御系エンジニアには、以下のようなスキルが求められます。
- 組込みスキル標準(ETSS)
- プログラミングスキル
- 制御やハードウェアなどの専門知識
- 制御理論に関連する数学的知識
- 根拠のある要件定義や提案ができる論理的思考力
- メンバーと関係を築けるコミュニケーション力
設計に直接かかわる知識やスキルだけではなく、思考力やコミュニケーション力など幅広い能力が求められます。自分のスキルや専門性を整理し、適性を見極めましょう。
組込みスキル標準(ETSS)
組込みスキル標準(ETSS)とは、組み込みソフトウェア開発に必要なスキルを体系的に整理したフレームワークです。人材不足を解決するために策定されたものであり、人材育成に活用されています。
技術・開発・管理という3つのカテゴリーでスキルが整理されているため、フレームワークについて理解することで基礎を身につけられます。
プログラミングスキル
制御系エンジニアは、システム開発をする際にプログラミングを必ず行うため、プログラミングスキルが欠かせません。
C言語やC++などさまざまな言語があり、要件によって使用するプログラミングスキルが異なります。システム開発には、C言語やC++、Javaなどを使うことが多いため、汎用的なプログラミング言語を優先的に学ぶのがおすすめです。
制御やハードウェアなどの専門知識
制御系エンジニアが取り扱う制御システムは、一般的なシステムよりも専門性が高いため、制御に関する高度な知識が必要です。各デバイスに対応した制御システムや、自動制御システムなど、幅広い知識を身につけるようにしましょう。
また、制御システムには独自のハードウェアを使用するため、ハードウェアに関する知識も求められます。制御とハードウェアの知識をセットでもっていることが重要です。
制御理論に関連する数学的知識
制御系エンジニアが取り扱う制御システムは、制御理論にもとづいて構築され、理論のもとになっているのは数学的知識です。
微分・積分や確率論など、さまざまな数学理論が活用されているので、数学的な知識を習得している必要があります。とくに制御にかかわる数学的知識を学び、理論への理解をシステム開発に生かしましょう。
根拠のある要件定義や提案ができる論理的思考力
制御系エンジニアは設計・開発だけではなく、要件定義や提案などを行う場面もあります。直感的な設計や判断ではシステムが正しく動作しないおそれがあるため、常に論理的でなくてはいけません。
要件定義や提案の理由が誰にでも伝わるように、根拠を必ず用意しましょう。漠然としたイメージやニュアンスは、設計・開発の失敗につながるため、論理的思考をベースにした仕事が求められます。
メンバーと関係を築けるコミュニケーション力
制御系エンジニアは、黙々と設計・開発に取り組むことは少なく、クライアントやメンバーなどとコミュニケーションをとる機会が多くあります。
制御システムは正確性を求められるため、物事を正確に伝えたり、聞き取ったりする能力が必要です。
クライアントと接する場面であれば、抱えている課題を引き出すヒアリングスキルや、信頼をつくる関係構築力などが求められます。会話が得意なだけではなく、円滑な関係を築くために話す力と聞く力が必要になるでしょう。
オムロン株式会社の制御機器事業部 検査システム事業部では、ほかの部署との連携が活発で、日頃から交流を積極的に行っています。インタビューを詳しく見たい方は、ぜひ以下の記事をチェックしてみてください。
Q.制御機器事業部内で他部署との連携などはされていますか?
私たちの検査装置はオムロンの製品がたくさん組み込まれています。また、先に話したソリューションの実現には他の部署とのコラボレーションが不可欠です。制御機器をつくっている開発部隊とは技術的な交流や連携を日ごろから行っており、さまざまな先端の制御技術を提供してもらっています。
タイズの強み
転職支援実績
制御系エンジニアで活用できる資格
制御系エンジニアに必須の資格はありませんが、就職・転職や現職でのキャリアアップなどに資格が役立つ場面があります。スキルや経験が重視される傾向があるものの、資格によって客観的に専門性をアピールできるのが資格取得のメリットです。
制御系エンジニアに役立つ主な資格は、以下の通りです。
資格名 | 証明できるスキルや知識 |
応用情報技術者試験(AP) |
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JSTQB認定テスト技術者資格 |
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エンベデッドシステムスペシャリスト試験 |
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ETEC(組み込み技術者試験制度) |
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OCRES(OMG認定組込み技術者資格試験) | UML、BPM、MBSE&SysMLの知識や利活用スキル |
資格によって、身につけられるスキルや知識が異なります。志望する企業で必要とされている能力や、現職で活用しやすい知識にあわせて、取得する資格を考えてみましょう。
制御系エンジニアの将来性
制御系エンジニアの将来性として、デジタル技術やAIの発達などを背景に、今後需要が増していくと考えられています。
業務のシステム化やツール導入などが加速している中、制御系エンジニアが必要とされる場面が増加しているものの、デジタル化を推進するうえで課題が多くあるのが現状です。
総務省の令和5年 情報通信に関する現状報告の概要によると、デジタル化を進めるうえでの課題として日本企業の41.7%が「人材不足」、30.7%が「デジタル技術の知識・リテラシー不足」と回答しています。
課題が顕著になっている一方で、日本のICT市場は拡大傾向にあり、近年大きく成長しています。銀行や官公庁などの予算額が増えており、市場が広がっているともいえるでしょう。
勢いのある市場でありながら、専門的な知識をもつ人材が不足しているため、自分のもつスキルをアピールできれば、就職・転職するチャンスがあります。
タイズの強み
転職支援実績
制御系エンジニアのキャリアパス・キャリアプラン
制御系エンジニアとしてキャリアをスタートさせると、以下のような道のりがあります。
- マネジメント職を目指す
- スペシャリストとして現場で活躍する
- コンサルタントとして独立する
制御系エンジニアとしての経験を生かして、製品やプロジェクトをリードしたい方はマネジメント職を目指す選択肢があります。プロジェクトのリーダーやマネージャーなどのポジションを担いながら、エンジニアの経験を発揮することで、よりシステムの設計・開発を実現できるでしょう。
プレイヤーとして現場で活躍し続けたい方は、スペシャリストを目指すキャリアプランがあります。経験やスキルを積み上げ、高い専門性を発揮することで、企業を代表する制御系エンジニアとして活躍できるはずです。
また、制御系エンジニアの経験を生かし、エンジニア目線でのサポートを必要としている企業へコンサルタントを提供する道のりもあります。これまでの知識やスキルで人のために役立てたい方は、コンサルタントとしての独立も検討してみてはいかがでしょうか。
タイズでは、スペシャリストとして活躍するための転職を支援しています。以下の記事では、システムエンジニアへの転職成功事例を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
「IoTやAIなど最新技術を習得して、スキルアップをしたい」パナソニックのシステムエンジニアに転職成功したストーリー|メーカー転職成功事例・体験談
制御系エンジニアとしてシステムやソフトウェアを開発しよう
制御系エンジニアとは、機器の制御システムの設計・開発を行う仕事で、要件定義や導入後のフォローにも対応します。
突発的なリカバー業務への対応や幅広い業務に対応する大変さはあるものの、開発に携わった機器を目にする機会があり、仕事へのやりがいを感じられるでしょう。
制御系エンジニアに求められるスキルや役立つ資格をもっていると、就職・転職を実現しやすくなります。
タイズでは、メーカーへの転職に特化したサービスを提供しています。とくにスペシャリストを目指した転職支援を強みとしているので、制御系エンジニアとしてキャリアを築いていきたい方はぜひ一度ご相談ください。
タイズの強み
転職支援実績