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半導体メーカー・業界とは?種類や主な職種の仕事内容・将来性まで解説
半導体メーカーは、さまざまな機器に使用される半導体の開発や製造を行うメーカーで、私たちの生活を支えている業種のひとつです。
国内外で注目されている半導体に興味をもっている方の中には、半導体メーカー・業界についても詳しく知りたい方がいるのではないでしょうか。
本記事では、半導体メーカーの種類や主な職種の仕事内容、将来性などを解説します。向いている人の特徴や就職・転職に関する情報も紹介しているので、半導体メーカーで働いてみたい方もぜひ参考にしてみてください。
01. 半導体メーカー・業界とは
半導体メーカーとは、電子機器に欠かせない半導体の製造と販売を行う企業・業界です。半導体とは、一般社団法人 日本半導体製造装置協会によると、電気をよく通す導体と電気をほとんど通さない絶縁体との中間の性質をもつ物質や材料と定義されています。
半導体メーカーや業界では、半導体を材料に用いたトランジスタや集積回路などの製品自体を「半導体」と呼ぶことが多いです。
半導体は、スマートフォンやパソコンなどの電子製品の制御をする際に欠かせない部品です。さまざまな電子機器に使われている点で、社会において重要な役割をはたしているメーカー・業界といえるでしょう。
02. 半導体メーカーの種類と主な企業例
半導体メーカー・業界は、以下3種類のメーカーで成り立っています。
- 半導体材料メーカー
- 半導体製造装置メーカー
- 半導体製造メーカー
設計から製造までを分業する形で各メーカーが連携する構造によって、半導体が広く流通しています。上記メーカーによってつくられた半導体は、半導体商社によって販売される仕組みです。
ここでは、3つの半導体メーカーの特徴や主な企業例を解説します。
半導体材料メーカー
半導体材料メーカーは、半導体をつくるために必要な材料の製造や開発をしています。ウエハ(半導体の基盤材料)の製造に関する物から、商品化に必要な物まで、各工程に必要な材料に特化して提供しているのが特徴です。
半導体材料メーカーには、以下のような企業が挙げられます。
- 株式会社村田製作所
- ローム株式会社
- 信越化学工業
- 株式会社SUMCO
- 京セラ株式会社
材料を扱うため、化学メーカーが多く挙げられます。「半導体の素材」は各工程ごとに取り扱う材料がまったく異なるため、企業選びの際は要注意です。
半導体製造装置メーカー
半導体製造装置メーカーは、材料から半導体をつくるために必要な装置を製造しています。半導体の製造には、洗浄や加工などさまざまな工程があり、各工程で専用の装置を使用しています。半導体材料メーカーと同じく、半導体を製造するために重要な役割を担う企業です。
半導体製造装置メーカーの企業例は、以下の通りです。
- 株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ
- 東京エレクトロン
- レーザーテック
- 株式会社ディスコ
- 株式会社東京精密
半導体製造装置の生産には専門性が求められるため、独自の強みをもったメーカーが多く挙げられます。
半導体製造メーカー
半導体製造メーカーは、半導体材料メーカーから仕入れた材料や半導体製造装置メーカーから導入した装置を使用し、半導体を製造しています。
企画から製造まで一貫して行うIDMや、ウエハ製造に特化したファウンドリなど、事業形態はさまざまです。各企業の事業形態にあわせて、自社工場での製造やファウンドリとの連携などで半導体をつくっています。
主な半導体製造メーカーは、以下の通りです。
- ローム株式会社
- キオクシア
- ソニー
- ルネサスエレクトロニクス
- 富士電機
半導体製造メーカーの中では、国内企業だけではなく、エヌビディアやサムスン電子などの海外企業もシェアを獲得しているのが特徴です。
03. 半導体メーカーの年収
半導体メーカーの年収の目安として、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、メーカー全般を含む製造業の平均給与は約501万円です。給与所得者全体の平均給与は458万円であり、平均よりも高い収入を期待できるでしょう。
タイズのデータでは、半導体メーカーの平均年収は、550万円程度です。
年代 | 大手企業(正社員) | 中小企業(正社員) |
20代 | 440 | 400 |
30代 | 650 | 530 |
40代 | 800 | 650 |
単位:万円
引用:タイズ経由で転職成功された方の実績(2023年度)
専門性を要求される職種が多いことや、半導体の需要が高いことなどから、比較的年収の水準は高くなっています。
実際の年収は企業の規模や職種などで上下するため、あらかじめ気になる企業の年収をリサーチしてみましょう。
04. 半導体メーカー・業界の主な職種と仕事内容
半導体メーカー・業界には、以下のような業種が製造・販売に携わっています。
- 研究開発
- 品質管理・品質保証
- 調達・購買
- 営業
それぞれの仕事内容をチェックし、やってみたい職種や相性のよい職種をぜひ見つけてみてください。
研究開発
半導体メーカーの研究開発は、半導体に使用する材料の研究や、半導体製造装置の設計開発などに携わります。
新たな技術を見つけるために研究に取り組んだり、製品化に向けて設計やシミュレーションを繰り返すなど、半導体製造の土台をつくる職種です。
研究開発職の仕事内容は以下の記事でも解説しているので、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
研究開発職とは?仕事内容・向いている人の特徴・転職成功事例を紹介
品質管理・品質保証
品質管理や品質保証は、半導体そのものや材料、製造装置などの品質を保つために業務に取り組む職種です。
品質管理は品質を満たすために工程や業務を管理し、品質保証は製品の品質検証やクレーム対応などを行います。
品質管理や品質保証の仕事内容や年収は以下の記事で解説しているので、あわせてチェックしてみましょう。
調達・購買
半導体製造メーカーでは、材料や製造装置を用意するために、調達・購買という職種が活躍しています。
指定された材料や装置を間違いなく調達することはもちろん、顧客のニーズを見極め、最適な資材を選定することも大切です。
営業
半導体メーカーの営業は、半導体商社を対象に半導体や材料、製造装置などの提案を行い、自社の製品を流通させるのが主な役割です。
半導体商社が半導体を必要とする企業に売り込むために、半導体メーカーの営業職は商社に対して自社の製品を提案をします。半導体は海外でも高い需要があり、メーカーによってグローバルな営業を行うこともあります。
メーカー営業への転職については以下の記事で解説しているので、メリットやデメリット、成功させるポイントを知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
05. 半導体メーカー・業界に向いている人の特徴3選
ーカー・業界に向いている人の特徴は、以下の3つです。
- 半導体業界に関する知識やスキルをもっている
- 緻密な作業を遂行できる集中力と根気がある
- 目標をクリアするまでやり抜く責任感がある
自分のスキルや価値観などと照らしあわせて、半導体メーカーへの適性があるか考えてみましょう。
半導体業界に関する知識やスキルをもっている
半導体メーカーは、どの職種でも半導体に関する知識やスキルが必要になるため、すでに知見をもっている人は適性があります。
業界について正しく理解していることはもちろん、急成長する業界の動向を日々追っていたり、新しい技術を知識として取り入れていたりする人は、即戦力になれるでしょう。
半導体を取り扱うメーカー「株式会社村田製作所」では、プロジェクトに求める人物像として、システムやソフトウェアに強い人材を例に挙げています。
Q.今回、外部から人材を採用する背景についてお聞かせください
A.ムラタではハードウエアをやっており、ものづくりや部品、デバイスの開発は得意ですが、例えば、もう少し領域を広げて、システムや通信ネットワークを開発しようとすると、やはりシステムやソフトウエアに強く、知識のある人材が必要になります。
緻密な作業を遂行できる集中力と根気がある
半導体メーカーの職種の多くは、日々緻密な作業に取り組むため、集中力や根気が必要です。半導体は精密機器であり、目に見えないわずかなちりや傷が入るだけでも、製品として流通できません。
目の前の作業に集中しながら、1日に決められた目標に対してひとつずつ正確な仕事ができる人が求められます。実際に半導体製造装置の開発や製造を行う「株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ」でも、洗浄装置の設計のように緻密な作業が求められています。
半導体にかかわる細かな作業の繰り返しに、耐えられる忍耐力が必要です。
株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズのインタビュー記事を見る
目標をクリアするまでやり抜く責任感がある
半導体メーカーでは、1日に製造する材料や装置などの目標を決められていることが多いため、目標に対して責任感をもって取り組める人が向いています。
目標の数量をこなすだけではなく、ミスなく完了し、精度の高い仕事ができる遂行力のある人が重宝される業界です。
半導体を取り扱うメーカー「ローム株式会社」の設備技術部門で働いている方は、日々やりがいと緊張感をもって仕事に取り組んでいます。
Q.仕事のやりがいはなんですか?
A.やはり私たちの部署が機械を止めてしまえば工場全体が停止するので、そこの一員として大きな責任とやりがいを感じます。関連部門との接触もすごく多いですし、排気や排水設備管理しているので環境部門や広報部門との付き合いもあります。
豊田様:もし自分が何かを見落として機械を止めると工場全体が止まるということは経験で理解しています。とても緊張感はありますが同時にやりがいもあります。例えば冬の時期だと急激に温度が下がることがあり、たびたび現場へ設備を見に行くなどして、常に気を付けていますね。
06. 半導体メーカー・業界の現状と将来性
半導体メーカー・業界を理解するうえで、今どのような状況に置かれているか、今後どのように変化していくのかは重要なポイントです。
半導体メーカー・業界の現状と将来を詳しく解説していきます。
半導体メーカーの現状|需要に対して供給が不足している
半導体メーカーは、世界の半導体市場を出荷額で見たときに、2015年以降増加傾向にあります。
イギリスの調査会社Omdia(オムディア)が発表したデータによると、日本の半導体市場についても、2015年頃から増加傾向にあり、2016年に約50億ドルだった出荷額が2022年には約80億ドルまで成長しています。
市場自体は好調ですが、新型コロナウイルス感染症の流行を背景に電子機器の需要が高まり、半導体の不足が起きました。一時供給不足が起きていましたが、現在は徐々に各メーカーが稼働率を高め、生産能力の向上に取り組んでいます。
また、日本の半導体業界は国際的な競争力の低下が叫ばれています。アメリカや中国などの勢いが増している中で、どのようにシェアを取り戻していくかは近年の課題といえるでしょう。
就職・転職事情としては、人手不足が深刻化しています。中途採用のニーズがあるため、一定のスキルがあれば転職のチャンスがあるでしょう。
半導体メーカーの将来性|業界全体で成長が見込まれている
半導体メーカーは、電子機器の普及やデジタル化の進展によって、今後も需要が続く業界と考えられています。
産業用ロボットや自動運転技術、遠隔医療など、新しいニーズも生まれており、デジタル技術が発達するほどに、半導体メーカーは重要な存在となっていくでしょう。
一般社団法人日本半導体製造装置協会が発表した「半導体・FPD製造装置 需要予測」
によると、半導体製造装置やFPD製造装置の販売高は上昇する予測です。
引用:半導体・FPD製造装置 需要予測|一般社団法人日本半導体製造装置協会
販売高は2023年度の約4兆5千億円と比較して、2024年度には約5兆円まで上昇すると予測されています。販売需要の高まる半導体業界は、関連する人材ニーズの高まりが予想されます。
07. 半導体メーカー・業界への就職・転職で知っておきたいこと2つ
半導体メーカー・業界への就職・転職を検討している方は、以下2つのポイントを知っておきましょう。
- 関連する職種であれば異業種から転職できるチャンスがある
- 海外メーカーへの転職も視野に入れられる
製造業の転職については、以下の記事で詳しく解説しています。未経験から成功するポイントも説明しているので、ぜひ就職・転職活動に役立ててみてください。
製造業への転職は難しい?未経験からでも成功させるポイントと3つの事例を紹介
知っておきたいこと2選
関連する職種であれば異業種から転職できるチャンスがある
半導体メーカーは、業務に専門性を求められるため、経験があった方が有利になりやすい傾向があります。同業種から転職する方が可能性が高くなるものの、異業種でもチャンスはゼロではありません。
異業種でも希望する職種に関連する職種であれば、スキルや経験を活かせる場合があります。機械の設計・開発や営業などであれば、半導体メーカーでも経験をもとに活躍できるでしょう。
海外メーカーへの転職も視野に入れられる
半導体メーカー・業界は、国内だけではなく海外でも成長している市場です。そのため、グローバルな活躍を目指している方は、半導体を取り扱う海外メーカーへの転職も視野に入れられます。
注意したいのは、海外への人材流出が増えた場合に、国内でも人材のニーズが高まる可能性が高まることです。海外への流出にともなって国内の人手不足が起きた場合には、日本での採用ニーズが生まれるため、海外と国内両方の動きに注目しましょう。
半導体メーカー・業界を理解したうえで就職・転職を考えてみよう
半導体メーカーは、電子機器の普及やデジタル化の進展によって、今勢いがあり将来性も期待できる企業です。
半導体材料メーカーや半導体製造装置メーカー、半導体製造メーカーなどがあり、それぞれの業種で研究開発や品質管理などの職種が活躍しています。
半導体メーカーへの就職・転職は、専門的なスキルや経験があれば、異業種からでもチャンスがあります。半導体メーカーへの理解を深めて、ぜひ就職・転職を考えてみてください。