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「みなし残業制度」とは?|損をしないために知っておきたいこと
弊社は関西メーカー専門の転職エージェント「株式会社タイズ」です。今回の記事では求職者の方より時折、ご相談いただきます「みなし残業制度」について、解説したいと思います。
これから転職をしようとされている方は転職活動をはじめる前にぜひご一読いただければと思います。
―目次―
1.みなし残業制度の仕組みと目的
2.従業員にとってのメリット
3.みなし残業制に関するトラブル
みなし残業制度の仕組みと目的
そもそも「みなし残業制度」は、1988年の法改正時に設けられた「みなし労働時間制」が始まりと言われています。
労働基準法では「労働時間に応じて賃金を支払うこと」大前提としていますが、労働時間を正確に把握することが難しい職種や、従業員が自分で裁量を持って働いた方が合理的とされている職種については、労働時間ではなく成果に応じた賃金を支払うべきであるという成果主義に基づいて「みなし残業制度」は発足しました。
細かく説明すると、「みなし残業制度」は「みなし労働時間制に基づくみなし残業制」と「定額残業制に基づくみなし残業制」(いわゆる固定残業制)の2種類に分類されます。
更には「みなし労働時間制に基づくみなし残業制」は「事業場外みなし労働時間制」、「企画業務型裁量労働制」、「専門業務型裁量労働制」の3つに分類されます。
「労働時間を正確に把握することが難しい職種」が「事業場外みなし労働時間制」にあたり、主に外勤が中心となる営業職等が該当します。また、「従業員が自分で裁量を持って働いた方が合理的とされている職種」は「企画業務型裁量労働制」、「専門業務型裁量労働制」に分類され、ディレクター職や研究職等が該当します。
従業員にとってのメリット
残業しなくても残業代がもらえる
残業代が固定されているわけですから、従業員は残業をしてもしなくてもこの手当を受け取ることができます。
例えば、40時間分のみなし残業時間が設定されていたとして、実際には全く残業しなかったとしても40時間分の残業手当を受け取ることができます。
仕事の生産性を高めて、残業時間を短縮すればするほど得をすることになるのです。
また、よく弊社にご質問いただく内容として「みなし残業40時間分と設定されている求人の場合は40時間の残業があるのですか」というものがありますが、必ずしもそうではありません。
仮に40時間分のみなし残業時間を設定されていたとしても実際の平均残業時間は20時間程度、あるいはほとんどないというケースもあります。
休日出勤手当とは別もの
メリットからは外れますが、誤解されるケースが多いようなので説明をしておきます。
この「みなし残業制度」に含まれるのはあくまでも通常の残業時間のみです。そのため、休日に出勤した際に支払われる休日割増賃金や夜22時以降に勤務した際に支払われる深夜労働の割増賃金は別途支払われる手当となります。
万一、支給されていないということがあれば、総務担当者に確認してみましょう。
みなし残業制に関するトラブル
私も「みなし残業制度」の対象になるの?
労働基準法により定められている基準に則って言いますと、どのような職種、業務内容であっても、みなし残業制(固定残業制)の対象となりえます。
「みなし残業時間」に上限はある?
「みなし残業時間」には基本的に45時間までという上限があります。これは、いわゆる36協定で1カ月の残業時間の上限を45時間までとしているためです。残業時間そのものは45時間を超えても36協定に特別条項を付けていれば年に6回(半年)までなら違法ではありません。就業における注意点としては「みなし残業時間」が月に46時間以上と設定されている場合です。
残業が多いのに給与が少ない?
給与の計算式をまとめてみました。自分の給与に当てはめて確認をしてみましょう。
<計算式>
・1時間あたりの給与単価(時給)
時給=基本給(残業代などの手当を除いたもの)÷1カ月の所定労働時間(勤怠管理や給与明細に明記されていると思われます)
例えば、月給223,400円(基本給:158,400円、固定残業代40時間分:45,000円、役職手当:20,000円)という方がいらっしゃるとすると、時給は基本給の158,400円を所定労働時間で割った金額となります。所定労働時間が176時間だった場合の時給は158,400円÷176時間で900円ということになります。
この時給の金額が最低賃金を下回っている場合は違法な労働条件となります。2019年2月時点で言うと東京や大阪では下回っている金額です。
※厚生労働省が発表する都道府県別最低賃金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
・残業代
支払われる残業代=実際の残業時間-固定残業時間×時給×割増率(25%)
例えば、固定残業時間40時間として実際の残業時間が45時間だった場合、固定残業時間を5時間超えているため、5時間分の残業代が追加で支払われます。仮に時給が2,000円だったとすると、「2,000円(時給)×5時間(残業時間)×1.25(割増率)」という計算式となります。この場合だと12,500円の残業代が、固定残業代とは別に支払われることになります。
ちなみに「みなし残業代」は給与明細にも記載されています。
名称については企業によって異なるため、詳しくは就業規則や雇用契約書を確認する必要があります。一般的には「固定残業代」や「固定残業手当」という表現で書かれていることが多いようです。給与がきちんと支払われているか不安に感じた際には確認してみてはいかがでしょうか。
結局「みなし残業制」はどうなの?
先に述べた通り、従業員にとってのメリットがあることは事実です。
しかし一方で、一部の報道では「みなし残業制度」を採用している求人の約8割が違法であるとも言われており、社会問題にもなっています。
調べればすぐに分かると思いますが、弁護士事務所や社労士事務所のウェブサイトでも違法な労働時間、賃金形態になっていないかと警鐘を鳴らしています。
また、厚生労働省では平成29年度の賃金不払い残業の監督指導を行った際、対象となった労働者は205,235人にも上ったと発表しています。その他にも、求人票に記載されている内容と実際の労働条件の相違に対する苦情・申出では、賃金・固定残業代に関する内容が最も多いとも発表しています。
制度としての歴史は決して長いものではないため、「みなし残業制」に関するトラブルというのは少なくありません。必ずしも従業員にとってデメリットの多い制度というわけではありませんが、他人事で済ますのではなく当事者意識をもって向き合うようにしましょう。
■まとめ
求人票に記載されている内容が全てではないので、上記のようなトラブルを避けるためにも、これから転職をしようとしている方は転職エージェントの活用をお勧めします。
弊社「株式会社タイズ」は関西メーカー専門の転職エージェントです。
求人紹介や転職相談・転職支援をさせていただきます。関西メーカー企業への転職を考えられている方はぜひご登録ください。
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