JCRファーマ株式会社の執行役員の薗田様に、希少疾患のバイオ医薬品研究開発について、お話を伺いました。

JCRファーマ株式会社 執行役員 研究企画本部長 薗田啓之様(工学博士)

メーカー専門の転職サイト「タイズ」に求人を掲載している、JCRファーマ株式会社 執行役員の薗田啓之様に、希少疾患のバイオ医薬品研究開発の背景やお仕事に対する思い、中途採用について、コンサルタントがインタビューさせていただきました。

執行役員 研究企画本部長 薗田啓之様

■JCRファーマ株式会社の概要

代表者:代表取締役会長兼社長 芦田 信、本社所在地:兵庫県芦屋市、設立:昭和50(1975)年9月13日、従業員数:597名(平成30年9月30日現在)

世界トップクラスのバイオ技術を誇り、現在、グローバル展開に挑戦している医薬品メーカー。独自のバイオ技術、再生医療技術を活かした新薬開発で希少疾患・難病に取組みます。少数精鋭で、研究から製造、販売までを一貫して行い、日本発・世界初の製品を世に届けています。

執行役員 研究企画本部長 薗田啓之様について

希少疾患のバイオ医薬品研究開発に従事。難病の一つであるライソゾーム病※1治療薬の研究開発を進め、医薬品の有効成分を中枢神経に届ける高度な技術、血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」※2を発明。今回は、薗田様が、「J-Brain Cargo®」発明に至った研究開発ストーリーについてお伺いしてきました!

※1ライソゾーム病:ライソゾームは細胞の中の“ごみ処理工場”のような役割をしている細胞内小器官で、細胞の内外の老廃物がこのライソゾームにある「酵素」で分解され、代謝されます。 この酵素の一つが生まれつき欠損しているか、その働きが低下していることによって、老廃物が体内に蓄積し、さまざまな症状を引き起こす疾患です。(企業公式HPより抜粋)

※2血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」:血液脳関門を通過させて脳内に薬剤を届けるための技術。現在、JCRでは多くの疾患で中枢神経症状を伴うライソゾーム病治療薬の開発に本技術を適応した新薬の開発に注力。その他ライソゾーム病以外の、中枢神経疾患へ適応する新たな展開についても、ライセンスを視野に検討を進めています。

インタビュー

薗田さんが、J-Brain Cargo®を発明するためのプロジェクト(以下、プロジェクト)を立ち上げようと思ったきっかけについて、教えて下さい

このプロジェクトは、ある患者さんの母親から、「どうにかうちの子を救ってもらえませんか」と直接言われたことをきっかけに、スタートします。

一年に一回、患者さんと親御さん、それに関わっている医療関係者の方が集まる『日本ムコ多糖症※患者家族の会』というムコ多糖症についての情報交換の場があります。当時、私たちも仕事の関係で、その会に参加していました。その母親とは会場で偶然、席が隣になりまして。その際に、私を医者だと思われ、「うちの子は治らない病気だとわかっていますが、どうにかしてもらえないでしょうか?」と声をかけられました。私は医者ではなく、企業の人間だから何もできないとお伝えしたところ、「それでも話をさせてほしい」とのことだったのでお話を伺いました。

ムコ多糖症:ムコ多糖症は先天性の代謝疾患。生まれつき、ライソゾームにある「ムコ多糖」と言う物質を分解する酵素が欠損しており、ムコ多糖を分解することが出来ません。このため、分解されないムコ多糖が体内に蓄積することで様々な障害を引き起こします。

薗田さんが医者ではなく、民間企業の方とわかっても尚、お話をされたのですね

そうですね。そんなこと関係ないから、とにかく話を聞いてほしいという思いを持っておられました。切実だったと思います。お子さまはムコ多糖症の中でもIII型(Sanfilippo症候群)と呼ばれる、他のムコ多糖症と異なり、脳の神経変性症状が特徴的な病気を患っていました。

ムコ多糖症のお話を聞かれてから、実際にプロジェクトスタートに至るまでの経緯について教えて下さい

当社のおもしろい所は、一人の研究員が「こんな課題を発見しました」と言えば、「やってみたらいいんじゃない?」という風に、自由に何でもさせてもらえる環境があることです。また、昔は今よりもっと規模が小さな製薬会社でしたので、時間的な余裕もあり、やるべき仕事を終わらせてから自分なりにムコ多糖症の研究をすすめていきました。これがプロジェクトスタートの背景になります。

プロジェクトをスタートさせたものの、最初は何をやってもうまくいきませんでした。その後、プロジェクトに他の人も巻き込んでいって、様々な試行錯誤を重ね、5~6年が経った頃、やっと「これならいける!」という確定的な結果が出ました。

――――その時はどんなお気持ちでしたか?

一緒に研究をやってきた者と、ハイタッチしたか握手したかは覚えてないですが、「これはいけるな!」と喜び合った記憶があります。時間はかかりましたが、周囲からの協力があり、結果を出すことができたと思います。

マウス実験から臨床試験の準備段階に入ったのはいつ頃ですか?

2014年頃だったと思います。7~8人のメンバーで行っていました。メンバーは、他の仕事もしながら、この研究にも携わり、色んな研究をしていましたね。

―――結果を出すのには苦労されましたか?

そうですね。マウス実験でいい結果がでても、なかなか、その次の段階で結果が出せずにいました。そんな時、「こうやったら上手くいくんじゃないか」とメンバーからの意見・協力もあり、みんなの力で研究を最後までやり通し、結果を出すことができました。

人への投与を開始したのはいつ頃ですか?

2017年の3月です。これは普通の医薬品開発と比べて、ものすごく早い進捗だったと思います。その分忙しいですが、みんな研究が好きなので楽しんでやっています。休めと言わないと休まない人が多いですね。これは当社の社風の1つだと思います。

これだけ早く実験できて、結果が見えてきているのはすごいことですよね。何か理由があるのでしょうか?

みんなが一点を見て、同じ方向を向いているというのが、すごく大きいと思います。例えば、あの人が「やるぞ」と言っている、じゃあみんなでやるぞ!みたいな勢いがあるので(笑)

また、小回りが効くサイズだということも1つの理由だと思います。サイズが大きいと、意思決定に時間と人の手間がかかりますよね。今の状態だと、すぐに方向性が決まりますし、意思疎通もしやすく、みんなが納得感をもって取り組めています。

―――技術的な面では、何か理由はありますか?

当社は日本の製薬会社の中ではかなり早い段階からバイオ医薬品の開発を行っており、昔からバイオのノウハウや技術を蓄積していますので、もともと研究の土台があった分、当時ゼロからスタートする他社と比べて、有利であったというところが、非常に大きいと思います。

また、研究の土台はありましたが、当時はまだ、自社で一から研究してきた組換えタンパク製剤を上市した経験はありませんでした。そんな中、当社は2010年に国産初のバイオ後続品として、自社開発のバイオ医薬品を上市まで持っていくことに成功しました。これは会社全体の自信に繋がり、その流れに乗っかって、勢いがついていったことも、大きな要因だと思います。

研究をすすめる中で、メンバー全員で喜び合ったり、高揚感を感じたエピソードはありますか?

マウス実験でいい結果が出せたときもそうですけど、サルの実験でいい結果が出せたときは、みんな興奮してましたね。間違いはないか、何度もデータを見直しました。(笑)

はじめから、このプロジェクトは成功すると思っていましたか?

時間はかかるかもしれないですが、必ず成功するって思ってましたね。

――――その確信は何から生まれたのでしょうか?

これは元々の性格ですね。自信家なので(笑)

―――結果的に成果に結びついていることは凄いことだと思います。

結果を出すために、試行錯誤を重ねられたと思いますが、「世の中にないもの」を生み出すためには、どういう発想・考え方をされているのでしょうか?

私の感覚としては、ゼロから1を生み出すというよりは、昔からある基本的なコンセプトをどう応用するか・組み合わせるかを考える、という感覚です。

―――いろんな文献を読まれたりしたのでしょうか?

そうですね。文献はかなりの量を読みました。今はデータで保存できますが、昔は自分が読んだ文献は、どういう内容が書いてあるのか一覧にして、手書きで残していましたね。

現在、業界内外で注目されている御社ですが、薗田さんはどうお感じになられていますか?

会社としては、すごく成長したなと感じます。自分たちにしかできない分野に強みを持てていると思うので、JCRという会社は良いポジションにいると感じます。また、今後も成長性が見込めるという点で、前が開けていると感じます。

他社にはない、「JCRだからこそできること」についてお伺いしたいです

他社はプロジェクトとなると、お金や期間に制限を設けるケースが多いと思うのですが、当社はそれがあまりありません。自分が絶対いけると信じて、プロジェクトを遂行し続ける気持ちがあるのであれば、それを途中で辞めさせるようなことは多分ないです。

何かを作る時って、みんなで協力してやることももちろんありますが、基本的には発想ってひとりで生まれると思います。自分の頭の中だけでの考えになるので、その発想を邪魔されることなく、プロジェクト遂行に集中できる環境があるのは、当社の良いところだと思います。普通は、結果がだせなかったら、「打ち切りになってしまうのではないか」と思ってしまうのですが、そういう心配をする必要がないというのは、研究者として大きいと思いますね。みんな安心して、研究ができています。

薗田様の現在のご状況について教えて下さい

当時は、自分が手を動かして実験をして、自分が思いついたことは自分で証明をしていくということをしていましたが、今は完全にマネージャーとして仕事をしています。現在はムコ多糖症の中でもHunter 症候群※やその他のライソゾーム病に関するプロジェクトをリードしながら、酵素製剤と遺伝子治療の研究を行っています。

※ムコ多糖症II型(Hunter 症候群):ムコ多糖分解酵素活性の欠損または低下によって、結合織を中心とした全身の諸臓器に不完全に分解されたムコ多糖が蓄積することにより、様々な症状を呈する遺伝性代謝異常症です。ムコ多糖症の中では唯一、X染色体劣性遺伝を示し、出生男児の11~13万人に1人発症すると報告されています。

その後も、患者さんや 医療関係者の声を聞かれることがあると思いますが、いかがでしょうか?

まだ臨床試験の段階ですが、日本だけでなく、海外の患者さんや先生方から、電話やメールをいただきます。「どうにかして自分の息子を治験に入れたいのですが、どうしたらいいでしょうか?」といった内容や、「自分の国で臨床試験をしてほしい」など、そういった声がたくさん聞こえてきますので、期待に応えたいですし、やる価値のあることだと実感します。

人生を変えることができる医薬品ってあまりないと思います。私たちは、希少疾患でそれをやっていきます。逆に、希少疾患の分野は当社のような小回りの利く会社でないと出来ないと思います。自分たちがやりたいことが、やらなければいけないことになっているというのは、とても良い状況だなと思いますし、実行できるだけの材料・技術がそろってきているので、そういう意味では、これから入社される方は良い環境が整っていると思います。

具体的に、今後どんなことをやっていきたいですか?

ムコ多糖症には、今やっているプロジェクト(Hunter 症候群)以外にも多くの種類があり、ライソゾーム病というくくりでいいますと、50種類近くありますので、もっと研究範囲を拡大していきたいと思っています。

他にもまだ治療薬がない疾患が世の中にはたくさんありますし、アルツハイマー病や脳梗塞、パーキンソン病などは、薬は存在するのに、脳に薬の効果が届けられていないような病気もあります。そのような未解決な領域を打開できるようなモノ(薬)をつくりたいです。非常に難しいことですが、もっともっと研究をして実現できたらいいなと思います。

あらためて、希少疾患への思いや患者さんに伝えたいことはありますか?

今は助からないと思っていても、数年後はわかりません。今の医療の発展スピードは本当にすごいです。どんな病気でも希望があると思っています。また、希少疾患には、基本的には子どもで重篤な病気が多いので、生き方や生活がかわるような、根本的な解決につながる薬をつくりたいと思っています。

薗田様はなぜJCRファーマ株式会社に入社を決められたのでしょうか?薗田様のご経歴について教えて下さい

もともと大学では、薬に関係ない、「アグロバクテリウム」という、植物に遺伝子をいれるバクテリアの研究をしておりました。その後、当社の『難病にフォーカスした会社』というキャッチフレーズに惹かれ、2003年に新卒で入社。入社当時に、「どこの部署にいきたいのか」「この会社で何をしたいのか」といったことを聞かれまして、社長直下の研究部隊が一番面白そうだったので、希望を出してそこに所属しました。その後、会社から大学院に行かせてもらい、2009年に神戸大学でバイオ工学を学び、博士号を取得しました。

今後のJCRファーマの展望について、薗田様のお考えをお聞かせください

さらに会社を大きくして大企業のようになりたいという思いはまったくありません。このままの小回りがきいて、意思決定が速い、だからこそ希少疾患のフィールドでやっていけると思うので、この特徴は残したままでいきたいです。今の会社の成長スピードだと、すぐに1000人規模に拡大すると思いますが、ただ規模や人員を拡大していくのではなく、今の私たちにしかできないフィールドでやることの価値を残して、その他で拡大できるところは協業の可能性を見出していけばいいと思っています。今の良い環境を残したいというのは、私だけでなく、多くの社員が思っているところだと思います。

 

御社の魅力や求める人物像についてお伺いしたいです。また、中途採用者へメッセージをお願いします

風通しがよくて、何でも自分ごとでやらせてもらえる会社です。誰かの下に就いて、言われたことだけをやって、という状況はまずありません。自分のやっていることが明確で、会社にどんな影響があるのかわかるというのは1つの大きな特徴であり、魅力だと思います。

現在、当社には非常にたくさんのパイプライン(新薬候補)がありますが、パイプラインを研究開発の人員で割ったらおそらく世界トップレベルではないかと思います。それくらい少ない人数で、多くの研究を行っています。ですから、自分でやらないと研究が進まないですし、それぞれが中心となって、やりたいことをやっていける環境だと思います。女性でアクティブに活躍している方も多いですね。当社としても、そんな風に積極的に活躍していただける方に来て頂きたいです。

また、違う側面でいうと、バイオで新しい薬を研究できる会社は日本にあまりないと思います。好奇心旺盛で新しいことに挑戦するのが好きな方にとっては、当社は希望に沿った転職になるのではないでしょうか。是非、ご応募お待ちしております。

本⽇は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

-担当コンサルタントより-

「J-Brain Cargo®」という革新的な技術の発明者である薗田様に、直接お話を伺うことができて大変光栄でした。患者さんのご家族の声を機に研究に取り組まれ、「必ず成功する」という信念を持ち続け、実際に結果に繋げられていることに感動しました。そして、一人ひとりの発想を尊重し、やりたいことに自由にチャレンジできる環境・風土があることが、JCRファーマ社の研究開発力の源泉なのだと改めて感じました。 希少疾病・難病の患者さんの人生を変える治療薬を届けることができる製薬会社は、世界を見渡しても多くはなく、同社だからこそできるフィールドで価値を発揮し、着実に成長を遂げられている会社だと思います。他職種も含め、社員の方々が本当に自社に誇りをもって働いておられます。また、温かみがあり風通しが良い社風も、非常に魅力的だと感じます。新しいことにチャレンジしたい方には、ぜひお薦めしたい企業様です。

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この記事を書いた人

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釜瀬 里佳

株式会社タイズ

  • 関西メーカーへの高い合格率に自信あり。メーカーへの深い知見、太いパイプを活かした転職のご支援をさせていただきます
  • 「勤務地・給与」といった条件だけではなく「働きごこち・忙しさ・社風」など転職の軸を丁寧にヒアリングさせていただきます。
  • 転職成功者の満足度は92%! ※当社経由でご転職に成功された方へのアンケートより

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