オークラ輸送機株式会社の制御部の業務や製品の強み、企業風土について、制御部の部長様にお話をお伺いしました。

(2018.11.16更新)オークラ輸送機株式会社 設計統括部 制御部 部長 武田雅人様

■「物流システム」のオークラ輸送機株式会社

同社は世界の流通・物流業界を支える、総合物流機器メーカーです。
特にコンベヤ等の物流設備開発に強みを持っており、数多くの発明賞、グッドデザイン賞等を受賞。卓抜した開発力に定評があります。そうした背景から、大手飲料メーカーやネット通販大手からも選ばれ続けているオークラ輸送機株式会社。今回はそんな同社の制御部の業務や製品の強み、企業風土について、コンサルタントがお話をお伺いしました。

オークラ輸送機_機械設計_オークラのコンベヤ

オークラ輸送機本社にそびえ立つランドマーク

インタビュー

武田様はこれまで、御社でどのようなお仕事をされてこられたのでしょうか。

武田様:大学で電気・制御の分野を専攻し、1982年に新卒で当社に入社しました。就職活動ではいろいろな会社を受けましたが、プログラミングだけでなく、実際の装置を制御する設計の仕事であるという点が決め手になりました。入社2年目に研修を兼ねて、工事部門(現在はオークラサービス株式会社として別会社となっている)で様々な現場の新規立ち上げや試運転の業務を3年担当しました。その後、再び制御設計への配属となり、そこから現在まで制御設計一筋です。小規模なものから大規模なシステムまで、物流システムを動かすための制御の設計をしてきました。

オークラ輸送機_制御設計_取材中1

オークラ輸送機株式会社 設計統括部 制御部 部長 武田雅人様

3年間、現場を経験されたのにはどのような背景があったのでしょうか。

武田様:当時の上司の教育方針です。「現場経験がないといい設計はできない」という考えをもっておられ、現場で当社の製品について勉強させていただきました。今振り返ると、その頃が当社での経験の中で一番しんどかった時期ですね(笑)。あらゆる現場を渡り歩きながら、必死になって仕事を覚えていきました。最初は、図面を見ても意味が分からない、制御盤を開けてもよくわからない、という状態でしたが、お客様からすると担当者は私ですし、頼りになるのは自分自身という状況も手伝って、この3年間で飛躍的に仕事を吸収できました。

制御部の組織体制や扱う製品について教えてください。

武田様:制御部はお客様の業界や製品に関わらず、全ての制御業務を担当しています。制御一課、制御二課、情報システム課、制御改良開発課の4つの部署があります。それぞれの課の業務内容は以下の通りです。

制御一課:流通・物流のお客様向けの製品
制御二課:生産物流(食品・飲料メーカー向け)のお客様向けの製品
情報システム課:導入した設備をお客様のコンピュータで制御するためのシーケンサーの橋渡し
制御改良開発課:新しい制御機器の導入検討や、製品の標準化と制御標準図面の作成

制御改良開発課の業務内容について、詳しく教えてください。

武田様:市場には搬送機に関わるいろいろな新製品が登場するのですが、「その製品をどう使えば当社の設備に効率的に活用できるのか」を検討する部署で、時代の流れが速いからこそ必要な部署です。また、お客様から個別にオーダーいただいている装置を、パッケージ化して他にも販売できるように改良、製品化を行ったりもしています。例えば、先日、日本マテリアル・ハンドリング協会大賞で「特別賞」を受賞した「LED仕分け装置『PTIシステム』」の制御も当課が担当しています。

オークラ輸送機_PITシステム

日本MH大賞にて「特別賞」を受賞したオークラ輸送機社のLED仕分け装置「PTIシステム」の概要

製品のバリエーションの多さが特徴の御社ですが、御社の製品の強みは何でしょうか。

武田様:まず、当社のソータ(仕分け機)は本当によくできていると思います。商品を配送方面別に仕分けて、仕分けた先に待ち構えているトラックに積んでそのまま出荷できるというユニソータは、業界最速の製品です。

私たちの業界の営業は、「このソータを開発しました!」と自社の製品を宣伝して買ってもらう営業ではありません。お客様のニーズに合わせて製品を提案しなければ、お客様に満足していただけません。例えば物流センターなら、1日にどれくらいの量を捌く必要があるか、月単位ではどのくらいか、年間でみるとピーク時の物量はどのくらいか、このボリュームを捌くのに何人で担当したいか、を総合的に考え、この設備でいかがでしょうか、この設備に投資していただけるとこれくらいの人件費削減が実現できます、と提案をするのが仕事です。もちろんパッケージ化された製品もありますが、当社の強みはお客様のニーズに合わせて設備を提案し、それを実際に実現する、提案力と実行力だと思います。

武田様がお仕事をされる中で、苦労されていることは何でしょうか。

武田様:食品や飲料などの生産物流のお客様では、お客様の社内で設備メンテナンスのできる技術者が常駐していることが多いのですが、近年お取引が増加している流通物流業界のお客様は、メンテナンスのできる技術者が社内にいないケースが多くなっています。一方で、現在のネット通販では注文したらすぐ届くのが基本で、誤出荷や遅配に対するカスタマーの目が厳しくなってきている状況です。そうした中、お客様には99.999%以上の確率で誤出荷や遅配を発生させない設備が求められるため、装置の精度には苦労していますね。

お客様が生産物流の分野から流通物流の分野へ変化して、変わったことはありますか。

武田様:生産物流の業界では、例えば「ビールケース」等といった比較的重量が有り同じものを流すので、搬送物の仕様が明確に決まっているのですが、現在の流通物流業界のお客様は搬送物の仕様内で千差万別の商品をラインに流します。今は何でも、ネット通販で注文して家まで届いてしまうことをイメージしていただくと分かりますよね。そうした物流倉庫において、仕様外の商品は人の手で運ばれているのですが、やはりお客様の立場とすればそうした商品もできるだけコンベヤに載せてしまいたいものです。実は設備トラブル等の原因はこうした想定外の使用から来るものも少なくないのですが、こうした使用環境をも加味して、99.999%以上が求められます。お客様からの要望に対してその通りに出来るだけではだめなのです。「こういうものを流してもうまくいった!」という驚きをお客様に体感していただいて初めて当社の製品の良さを分かっていただけると思っています。

搬送装置メーカーには競合他社も多いかと思いますが、競合他社に御社が勝る部分は何でしょうか。

武田様:お客様の要望をいかに実現するか、というところです。他社が諦めた、対応できないと判断したお客様の要望でも、当社は具現化していますし、それが実際にできるというところが勝る部分だと思います。「逃げない、できるまでやる」スタンスをお客様からご評価いただいていますし、実はそうしたスタンスが評価されて、世界的なeコマースのリーディングカンパニーの物流装置も手掛けることができました。

オークラ輸送機_制御設計_取材中2

武田様が今後、実現したいと思われているようなことはありますか。

武田様:現在既に進めつつありますが、お客様との打ち合わせにおいて、3D画像を動かして作業性や操作性を体感していただけるようなシステムが導入できないかと考えています。打ち合わせだけでなくトラブルが発生した時も、復旧方法などをパソコン上でお客様と共有するような方法も考えています。

制御部の仕事の面白さはどういったところにありますか。

武田様:受注が決定した後に制御部に詳細な内容が届きますので、コストや納期を考慮しながら、いかにお客様の要望通りのものを用意できるか、というところが難しく、頭と工夫が求められる部署です。明確な答えがある訳ではないから難しいですが、そこが逆に仕事の面白さだと思います。いくらいい機械ができても、それを動かすのは制御です。もちろん、動かしてみて思い通りにならなかったということもあります。設計者にとって、「経験」というものは非常に大きいのですが、うまくいかなかった時に課内や部内で経験者の意見を聞きながら解決していきます。制御部は、ハード設計、ソフト設計の両方を一人が担当しなければなりません。全部を任されるからこそ、やりきったときの充実感はすごく大きいと思います。

オークラ輸送機_制御設計_ロゴ

お客様の要望に対して確実に、迅速に対応する“Quick Okura”が同社の行動規範の一つ

制御部の社員の方々の出張の状況について教えてください。

武田様:お客様との仕様の打合せや、設備の試運転の時に仕様通りの性能が出ているかの確認で現地に行きます。1ヶ月かかる案件ですと、お客様との打ち合わせに1ヶ月の間に1~2回と、試運転の段階では現場に張り付きます。大きな設備になると、月単位の出張になることもあります。もちろん、家庭の事情などは相談があれば調整して最適な人員配置を考えます。

御社では中途入社の社員に対する教育体制は整っていますか。

武田様:技術的な面においては、技術伝承ができるように社内大学を充実させています。勉強できる環境が整っており、技術的な心配はしていただかなくて大丈夫です。中途入社の方も、整備されたカリキュラムに則って勉強をしていただきます。当社の教育制度の充実度合いに驚かれた中途入社の社員もいるほどです。

御社の風土について、どのようにお感じになっていらっしゃいますか。

武田様:上下関係はあるものの、非常にフランクな雰囲気です。設計をしたい人、この仕事がしたい人だけが集まっている会社ですね。仕事をすることの目的や仕事で達成したい目標が同じ方向性を向いています。

御社へのご応募を検討されている方へメッセージをお願いします。

武田様:自分でいうのもなんですが、当社ってすごいんですよ。お客様が超一流の企業様ばかりなんですね。設備投資をして物流装置を導入される企業様は間違いなく右肩上がりの企業様です。そのお客様と直接会話できるのはすごいことだと思っています。機械が好きな方、いろいろなことにチャレンジしたいのであれば当社に来ていただくと相当面白い仕事ができます。スキルがあることに越したことはないですが、大きな案件に関わりたいという熱い思いを持っていることが大切だと思います。

本⽇は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

―担当コンサルタントより―
1927年に大庫鉄工所として加古川で創業して以来、90年以上に渡り地元に根付き、牽引してきた優良企業です。コロコンキャリヤーなど、数々のアイディア・発明を世に送り出してきた物流システムのリーディングカンパニーである同社にお話を聞くことができました。
「お客様の要望以上のソリューションを」というお話がとても印象的でした。難しいからこそやりがいがある、という武田様の表情はとても輝いており、今の社会になくてはならない最先端の物流システムを支えている、という誇りとやりがいを実感することができました。

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下元 瑛翔

株式会社タイズ

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