【関西ニッチトップメーカー特集】株式会社エスケーエレクトロニクスのフォトマスク事業や挑戦し続ける風土について、総務・人材開発部の方にお話を伺いました。

(2018.8.30更新)株式会社エスケーエレクトロニクス
管理本部 総務・人材開発部統括 長澤寿好様
管理本部 総務・人材開発部 人材開発グループ統括補佐 羽倉隆夫様

メーカー専門の転職サイト「タイズ」に求人を掲載しているエスケーエレクトロニクス社の総務・人材開発部の長澤寿好様、羽倉隆夫様に、エスケーエレクトロニクス社が大型フォトマスクのニッチトップメーカーとしての地位を確立するに至った背景、挑戦し続ける風土などについて、コンサルタントがインタビューさせていただきました。

■株式会社エスケーエレクトロニクスの概要

代表者:代表取締役社長 石田昌德、本社所在地:京都府京都市上京区、設立:2001年10月(株式会社写真化学より分社)、従業員数:336名(連結・2017年9月30日)
フォトマスクの設計・製造・販売。プリンテッドエレクトロニクス分野、RFID分野、ヘルスケア分野など、新規事業も積極的に手掛けている。
前身の株式会社写真化学時代に世界で初めて大型電子ビーム描画装置によるフォトマスクを製造(1988年)。大型フォトマスクのシェアは世界トップクラス。

■「フォトマスク」とは?

TFTアレイおよび色を表現するカラーフィルターのパターンを基板に転写するために使われる原版。フォトマスクに描画されたマイクロメートル(0.001mm)単位のパターン線が基板に転写されて液晶パネルが作られる。写真でいうネガフィルムのような役割のもの。
エスケーエレクトロニクスはパソコンや携帯電話、液晶テレビ等に使用される液晶パネルの製造過程でなくてはならない、高精細かつ大型のフォトマスクの製造において世界シェアトップクラスを誇る。

エスケーエレクトロニクス(人事部)_フォトマスク画像

インタビュー

スケーエレクトロニクス(人事部)_取材中(二人)

管理本部 総務・人材開発部統括 長澤寿好様(右)
管理本部 総務・人材開発部 人材開発グループ統括補佐 羽倉隆夫様(左)

長澤様、羽倉様のご経歴について教えてください。

長澤様:1991年に株式会社写真化学に入社しました(株式会社エスケーエレクトロニクスは2001年に株式会社写真化学より分社)。株式会社写真化学でプリント基板事業の営業を担当していましたが、フォトマスク事業が勢いよく伸びており、経営資源をフォトマスク事業に集中させるために異動となりました。エスケーエレクトロニクスの上場後の2005年に総務人材開発部に異動し、今日まで総務人事に関わる仕事を担当してきました。

羽倉様:サービス業の上場企業で総務関連の仕事を10年ほど経験し、2015年7月に中途採用で入社し、総務グループの所属になりました。法務に関する業務、契約のチェックや、株式関係の仕事を中心に担当していました。2016年10月に総務グループの総括補佐を拝命し、総務全体を見る仕事を担当し、その後人材開発グループに異動になりました。これまで人事の仕事は全くしたことがありませんでしたが、いつか人事に携わりたいという気持ちはあったので、良い機会をいただきました。

羽倉様が転職でエスケーエレクトロニクス社を選ばれた理由は何ですか。

前職は今とは異なる業界でしたが、休日が比較的少なく、プライベートに割ける時間は限定的でした。当時はまだ小さい子どもがいたので、そのことで家族に負担をかけており、ワークライフバランスを改善できる会社への転職を考えました。また、日本のものづくりに携わりたいという思いもあり、当時は35歳でしたが、思い切ってメーカーに転職を決めました。京都府内の上場会社で、家からのアクセスも良いメーカーを中心に探していたところ、ご縁があってエスケーエレクトロニクスに採用いただきました。

エスケーエレクトロニクス(人事部)_取材中(羽倉様)

御社がフォトマスク事業を始められた経緯について教えてください。

分社化前の株式会社写真化学の時代の1988年がフォトマスク事業の起点です。当時フォトマスクは、半導体用途が主流でした。半導体製造用フォトマスクの分野にはすでに多くのプレイヤーがいて、後発的にこの領域に参入するのは難しいだろうと見られていました。多くのプレイヤーがいる分野ではなく、専門的なニーズが発生し将来有望なものは何かを当時の経営陣は考えたのだと思います。そこで、将来的に大型で高精細なフォトマスクのニーズが出てくるだろうと市場を読み、1988年、電子事業部でフォトマスク事業を手掛けるための新しい組織が誕生し、フォトマスク事業が始まりました。当時の当社のフォトマスクは、電卓の液晶部分や、感熱紙に印刷するためのサーマルヘッドに使われていました。

液晶パネル向けのフォトマスクが拡大した背景について教えてください。

パソコンの普及です。特にノートパソコンは、従来のブラウン管では対応できず、液晶ディスプレーや薄型のディスプレーが必然的に必要になります。また、テレビでも従来のブラウン管テレビから液晶のテレビに置き換わっていきました。日本の狭い住宅でも薄型テレビであれば、大きくなっても喜ばれますよね。液晶になるとテレビのサイズがどんどん大きくなるだろうと予想していましたが、この予想は合っていました。パソコン向け、テレビ向けのフォトマスクの生産によって大型フォトマスク事業が急成長し、2001年に株式会社写真化学からエスケーエレクトロニクスが分社しました。このころは第4世代※にあたります。半導体用のフォトマスクを製造していたメーカーは、微細加工は得意としていました。しかし、大型化のノウハウや技術を持っていない状態でしたので、他社の追随は難しかったように思います。
※第〇世代:フラットパネルディスプレー業界では、ガラス基板のサイズのことをいう。第4世代のガラス基板は680mm×880mm~730mm×920mm。

フォトマスクの大型化にあたって、難しかったことは何でしょうか。

ハードルの連続であったと思います。まず、より大きなフォトマスクを製造するための装置が世の中にありません。装置を供給できるメーカーを探すところから当時の担当者達は苦心していたように記憶しています。今ある装置で単純に大きくできる訳ではなく、製造のサイズに合わせた装置が必要なのです。2009年に滋賀に第10世代※・第11世代対応の工場を作ったのですが、滋賀工場を建設するかどうかの判断がいちばん難しかったと思います。今までどこも作れなかったサイズのフォトマスクを製造するために、世界に先駆けた最新鋭の工場を作るということで、投資額は当社の売上と同規模程度の額でした。
※第10世代のガラス基板は2880mm×3130mm以上。60インチに対応。

滋賀工場を建設するという判断は正しかったのでしょうか。

滋賀工場建設のための投資は正解でした。2009年の投資が今のエスケーエレクトロニクスを支えていることは間違いないです。滋賀工場建設以降、当社しか第10世代のフォトマスクを供給できない状況が続きましたし、競合他社が現れたとしても、先に研究開発を進めている経験の差やこれまでのノウハウも蓄積していますし、価格競争の面でも優位になりました。また、現在中国市場においても第10.5世代液晶パネル工場投資が活況となっています。

フォトマスク市場における御社の競合はどういった企業になってくるのでしょうか。

ディスプレー業界は今や中国や韓国が主な市場になってきており、中国や韓国の企業が大きな工場を建てて積極的な投資をしています。納入先の工場の近くでフォトマスクを供給できるようになると、日本で製造を行っている当社よりも地理的に優位に立たれることは間違いありません。中国や韓国のメーカーよりも少しでも納期を早める体制を整え、地理的不利をカバーできるだけの技術力をつけようと取り組んでいるところです。

エスケーエレクトロニクス(人事部)_取材中(長澤様)

フォトマスク事業に次ぐ事業である、プリンテッドエレクトロニクス事業について教えてください。

フォトマスク事業から派生した事業です。従来のフォトマスクはフォトリソ技術※を使っており、均一に材料膜を被膜して、必要な部分を残すようにエッチングをして作られます。どうしても無駄な部分が発生しますし、環境へも一定の負荷を与えてしまいます。これに対しプリンテッドエレクトロニクス技術は、印刷技術を使って細かなパターン決めをし、量産時の無駄を出さない技術です。エスケーエレクトロニクスは、石田旭山印刷所という印刷事業からスタートしており、当社の技術の源泉は印刷技術にあります。
※感光性の物質を塗布した物質の表面をパターン状に露光することで、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを生成する技術。

ヘルスケア事業はどのような経緯で始められたのでしょうか。

ヘルスケア事業は異業種参入です。高齢化が進む日本において、あらゆるところで医療機器が必要になってきます。今までになかった医療機器が必要になり、ヘルスケア事業は今後も伸びると予想される分野であることが一つのポイントです。また、フォトマスク事業はB to Bですが、一般ユーザー向けにB to Cで直接消費者の役に立ちたい、貢献したいという背景もあります。

御社は中途採用を積極的に行っていますよね。

そうですね。この一年間では、新卒入社よりも中途入社の社員の方が多かったですし、当社は中途入社の社員の方が多いです。特に新規事業は、すでにその分野のノウハウをお持ちの方、経験をお持ちの方に入社いただいて、即戦力としてご活躍いただいています。フォトマスク事業についても、半導体の技術がベースですので、半導体の研究開発をされていた方、半導体の製造プロセスに携わっておられた方などは、当社にはない新たな視点を持ち込んでくれますし、当社が得るものも大きいです。

御社で活躍されている方はどのような方でしょうか。

自分の考えをしっかりと持っている人ですね。当社の経営理念は「創造と調和」です。クリエイティブな思考を持つ社員が会社になじんでいます。ただ単にスキルを身に着けているだけではなく、現状を改善したり、仕事を効率化したり、新しいことに挑戦できる人が、社内でも重要な役割を任されます。

エスケーエレクトロニクス(人事部)_ロゴ前

御社では新しい提案が求められる風土なのでしょうか。

当社の昨年のテーマは「自考力を発揮せよ」でした。フォトマスク事業ですと、ISOで決められたことを間違いなくやるのが前提になっていて、行き過ぎてしまうと、変化を許さない、過去踏襲的な状態になってしまいます。そこで、あえてチャレンジしなさいというテーマにしています。

新しいことに積極的に挑戦する人は高く評価されます。評価制度の中でも、よりチャレンジングな目標を設定するようになっていますし、その中でもさらに難しい課題については、挑戦して成功すれば当然高い評価ですが、結果が伴わなくとも、プロセスが評価されます。また、社内の表彰制度では、どのような創意工夫があるか、企画して取り組んだ結果、売上や利益がどうだったかというのはもちろん評価の対象ですが、どれだけ斬新なアイデアなのかという点も重視しています。過去に表彰されたものの中には、現場レベルで温めてきたものが花開いた、というものもあるかもしれませんね。

これからご応募される方へメッセージをお願いします。

チャレンジ精神のある方に来ていただきたいですね。人事制度の面でも、年功序列的な制度ではありませんし、会社に貢献してくださる方であれば若手でも登用する会社の風土です。過去とは違う取り組みに挑戦する方がご活躍いただけるフィールドを用意しています。

当社は新しい分野に積極的に挑戦することによって成長を遂げてきた企業です。当社のさらなる成長を担っていただける方に来ていただきたいですね。

本⽇は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

 

―担当コンサルタントより―
今回、改めてエスケーエレクトロニクス社の事業の歴史を知ることができました。市場の先を読む経営判断力と、それを推し進めるスピード感を持っていたからこそ、ここまでフォトマスク事業を発展させてこられたのだと感じました。中途入社の方が多くご活躍されており、新事業の立上げも進められている中、チャレンジ精神のある方が思いっきり活躍できる環境が整っていると思いました。このような方には是非エスケーエレクトロニクス社を知って頂きたいと思っております。忙しい所お時間をいただき、貴重なお話をありがとうございました。

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この記事を書いた人

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神田 康平

株式会社タイズ

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