企業インタビュー
[ 倉敷紡績株式会社 ]
【クラボウ(倉敷紡績株式会社)】エレクトロニクス分野のソフトウェア開発担当者にインタビュー!
01. 会社概要
1888年、地域産業の振興を目指し、岡山県倉敷市に「有限責任倉敷紡績所」として誕生したクラボウ。
以来、基盤となる技術を磨き、応用しながら事業を多角化してきたクラボウは、繊維から化成品、エンジニアリング、エレクトロニクス、バイオメディカルなどさまざまな事業分野へ進出。社会のニーズを鋭敏にとらえ、自社の技術が活かせる分野を見極めながら、事業開拓を続けています。また、若手にも責任ある仕事や大きなプロジェクトを任せ、「人を大切にし、育て伸ばす」社風が受け継がれています。創業130年以上の歴史があって堅実でありつつ、チャレンジングな人財にできる限りの努力を惜しまない、そんな会社です。
02. ご経歴について
猪上様のプロフィールと転職を考えられたきっかけについてお聞かせください。
2008年に大手電機メーカーの子会社に新卒で入社し、画像処理を行うソフトウエアの開発を経験して、2020年にクラボウに転職しました。
前職の業界では入社してから時間が経つにつれて、M&Aや事業再編が活発に行われるようになっていました。前職の会社も2回親会社が変わり、転職するタイミングで3回目の変更となりました。周囲の環境に流されて、自分のキャリアが変わっていくことに疑問を感じて、自ら能動的にキャリアを構築したいと考えるようになったのが転職のきっかけです。
また、関西出身で関東勤務だったため、転職を機に関西に戻りたいと考えて、キャリア構築と関西勤務を2つの軸にして、転職活動を始めました。
倉敷紡績様に応募された理由、入社の決め手は何でしたか。
前職で培った画像処理のスキルを活かしたかったので、関西で画像処理のソフトウエアを開発している会社を転職先として希望しました。その中にクラボウの求人があり、面接では「画像処理だけでなく、AIにも挑戦して欲しい」と言われました。AIの経験はありませんでしたが、前職のスキルを活かしつつ、新しいことに挑戦できる仕事だと思ったのが理由です。いくつか別の会社も応募したのですが、受託開発などの仕事が多く、クラボウだけが自社製品を上流工程から行い、自分でやることを決められる仕事だったことも転職の決め手となりました。
面接で印象に残っていることはありますか。
転職活動のピークが緊急事態宣言の1回目と重なりました。いくつかの会社に応募しましたが、「1回は対面で面接する」会社がほとんどでした。当時は関東に住んでいたので、面接のために関西へ移動するリスクを感じていましたが、その中でクラボウだけが一次から最終面接まですべての選考をリモートで済ませてくれました。コロナへの対応が迅速で、個人的にも嬉しかったです。
03. 業務内容ややりがいについて
所属されている技術開発部 商品開発課はどのような事業を展開していますか。
クラボウと言えば繊維のイメージが強いと思いますが、環境メカトロニクス事業部は繊維の開発・生産で培った技術を活かして新たな製品を作っています。
産業用機械で活用されるロボットの目となる「ロボットビジョンセンサー」、道路などの損傷をカメラで撮影して損傷箇所を検知する「インフラ検査システム」、製造現場で出荷前の製品にキズや汚れがないかをカメラ画像で検知する「外観検査システム」など、その内容は多岐にわたっています。
私が所属する商品開発課は、これらの多種多様な製品開発を担うキーとなる部署です。チームは製品群ごとに分かれていますが、技術資産はチーム全体で共有する体制となっています。
入社から現在まで、どのような業務に携わられていますか。
今は主に基板をカメラで撮影して、キズや欠陥を自動で検知する外観検査装置のソフトウエアの開発業務に携わっています。その中で2つの業務があり、1つはアプリケーションを作る仕事で、ソフトウエアを設計して、外注先に発注して実装・テストまでを行っています。もう1つはソフトウエア開発のスケジュール管理で、いくつかの案件の管理を行うマネジメント業務を任されています。
仕事をする上で大切にしていることは何ですか。
マーケットの要求に沿った視点を持つことです。
外観検査装置の直接のお客様は、PCや家電メーカーからの発注を受けて基板を生産している会社です。しかし、その先にはPCや家電などの製品を作っているメーカーと製品を使うユーザーがいます。基板を生産する会社のことだけを考えるのではなく、製品を作るメーカーや使うユーザーのことを考えていないと私たちの対応はどんどん遅れていくからです。
例えば、基板検査装置ではキズや欠陥を自動的に検知することが基本的に求められる機能です。しかし、メーカーは同じ面積の基板の中にできる限り多くの機能を詰め込みたいと考えます。基板を作る技術革新が進むと基板の設計はどんどん微細になっていきます。現在は1mmの1000分の1となるマイクロメートル精度のキズを検知していますが、もっと微細になると基板の配線はどんどん細く小さくなり、検知が必要なキズもどんどん小さくなります。今後も現在よりもさらに小さなキズを見つけられる検査装置が求められていきます。つまり、今のお客様の要望に対応するだけではなく、この先に求められるようになる要望に対応できるような視点を持っておくことが大切なのです。
もう1つは、直接のお客様である基板の生産工場では、無駄を省き生産効率を上げることが最大のミッションで、一つの製品を作るための時間をとにかく短くすることを求められます。検査装置には精度の高い検査ができることは当然で、さらに短時間で1枚の基板を検査できる性能が求められます。例えば、これまで人が入力していた検査結果を自動的にデータ化して蓄積し、それを瞬時に全社で共有化することで生産性を上げていくといった要望がこれからどんどん出てくると思います。
基板検査装置の優位性についてお聞かせください。
特長として「スイッチング撮像システム」があります。
何かの表面についたキズが正面からは見えないけれど斜めからだと見えるということがありますが、基板のキズも1つの照明だけでなく、別の角度からの照明を当てて撮影した方が精度は向上します。ただ、照明を変えて2回撮影すれば検査する時間は2倍になります。それを1台のカメララインで異なる照明条件を高速で撮影し、その画像を様々なソフトウエアで処理することで欠陥を見つけやすくするのが、クラボウの独自技術である「スイッチング撮像システム」です。
また、お客様によって生産している基板は異なっており、製造過程で出る欠陥も「キズが多い」「欠けが多い」といった違いがあります。それをソフトウエアで調整して、お客様ごとにカスタマイズして納品しています。他にも「生産性を上げるために、この手間を減らしてほしい」「品質管理のルールが追加されたので、こんな仕組みを入れてほしい」といった要望にも対応しています。こうした生産現場の要求に合わせた装置をカスタマイズできる技術の蓄積があるのもクラボウの検査装置の強みだと考えています。
これまでで一番印象に残っている仕事は何ですか。
AIに関するソフトウエアの開発ですね。今も取り組んでいる最中ですが、かなり難しいと感じています。AIの活用にはメリットとデメリットがあり、デメリットで大きなものはAIが「なぜそう判断したかが分からない」ことです。AIが犬と猫を判断するのに、犬と答えたとしても何故犬と答えたかが分からない。逆に犬を猫と間違えても、その理由が分からないのです。
犬と猫の区別なら大きな問題にはなりませんが、例えば医療機器でAIに人の生死にかかわるガンの有無を判断させた時、もしガンがあるのにないとAIが判断したとしても間違った理由は分からない。医療機器でAIを活用するのは、今の段階ではリスクが大きすぎるのです。
検査装置におけるAI活用では、検査装置が基板に欠陥があると判定した場合、現在はその基板をもう1度、人がチェックしていますが、このNGとなった基板のチェックをAIでやりたいという要望が出ています。しかし、AIがNGの基板をOKと判定すれば、その基板は市場に出て、最終製品に組み込まれます。もしもそれが重大な欠陥でショートを起こして発火すれば、メーカーと基板の生産会社には信用失墜などの大きな損失が発生します。AIが間違えましたでは済まされないのです。
AIを使って生産性を上げたいという要求とAIを使っても品質を落とさないという要求、どちらも満たすことが重要なのです。そこが最も難しい部分ですが、独自のノウハウを蓄積できる部分でもあるのです。AIを実装するだけでなく、AIを使った時に間違いを少なくするにはどうすればいいのかを考える、ものすごく頭を使いますが、それが仕事として面白い部分でもあると思います。
クラボウでのソフトウエア開発におけるやりがいについてお聞かせください。
自分たちがつくったソフトウエアが「工場の生産性と品質を向上させることに直結する」という価値を生み出せることが、やりがいになっています。
ソフトウエア業界にはいろんな仕事があります。例えば、家電やテレビのようにコモディティ化が進んだ業界では、ソフトウエアを作っても世の中を変えるような革新的な機能はもはや作りにくいのです。これまでになかった飛びぬけた製品をつくらない限りユーザーに魅力を感じてもらえないため差別化できず、最終的に価格競争に陥ってしまいます。
クラボウの環境メカトロニクス事業部のソフトウエア開発では、お客様の要望に対応し、お客様の課題解決に合わせたカスタマイズを行っています。お客様にとって、生産性と品質を向上させるという価値のあるソフトウエアを作っているのです。
これから取り組んでいきたい仕事についてお聞かせください。
現在、アプリケーションを作る業務とマネジメント業務を行っていますが、どちらかというと今後はソフトウエア開発チーム全体の力を伸ばすことに取り組んでいきたいと思います。これからさらにソフトウエアの開発は質を求められてタイトになっていきます。それに対応するためにチームの開発力を上げて、開発プロセスの改善にトライしていきたいと考えています。開発体制やソフトウエアの作り方の改善し、開発効率を上げて、今よりも早く今よりも品質の高いものを作る仕事にトライしていきたいです。
04. 社風や働き方について
職場の雰囲気やどんなタイプの方が多いですか。
自由でオープンな雰囲気だと思います。商品開発課はフリーアドレスになっていて、席が決まっていないので毎日景色が変わり、隣に座る人もいつも一緒ではないです。質問があればその人が座っているところに行って話をしたり、何かあれば声をかけて打ち合わせ用のオープンスペースに集まって話をしたりするのでチーム内の交流も活発です。
商品開発課のメンバーは結構論理的なタイプが多く、会議でも建設的な意見を出す人が多いです。感情的になったり、一方的に話したり、話を遮ったりする人が多いと議論するのがつらくなりますが、クラボウではそんな雰囲気になったことはありません。
人の話をきちんと聞きますし、論理的に意見を出せば、論理的な回答が返ってくるので、コミュニケーションにおいてストレスを感じることはありません。
新卒と中途入社の違いを感じたことはありますか。
中途入社の人は、新卒入社に比べて在籍期間が短いため、商品知識や開発経緯についての知識が少ないですが、知らないことは知らないといえば、きちんと教えてもらえるので業務がやりづらいということはありません。
私は中途入社して1年でマネジメントを任されているので、キャリアの差を感じることはありません。どんなキャリアになるかはその人の実力やキャリア、意志によって決められます。基板検査装置のリーダーは30歳くらいでリーダーを任されたと聞いています。リーダーより年上のメンバーもまとめていらっしゃいます。その人の実力や素質、考え方などを判断して、リーダーに抜擢されたのだと思います。リーダーへの昇進は年齢よりも実力や素質で決められています。年齢が上がったからマネジメント業務に就くということはなく、その人がプログラムを実装する能力が高くて、本人もその業務が好きであれば、マネジメントよりもさらにスキルを伸ばすポジションで活躍してもらうという考え方が商品開発課にはあると思います。
入社後の教育体制についてお聞かせください。
入社後の4月もしくは10月に経営理念や倫理要項、経営計画、コンプライアンスなど、会社の基本的な知識を学ぶための研修を受けます。また、新卒と中途入社を対象にした事業部で扱っている商品などの説明する研修にも参加しました。
業務に関してはOJTです。分からないことは先輩に聞きながら業務を学んでいきます。
残業は月にどれくらいありますか。
残業は月に10時間程度です。納期が近づくリリース前になると30時間ほどになることもありますが、30時間になる前に人事から注意が出されます。フレックス制度では出社と退社は2時間程度ずらすことができ、時差出勤をすることができます。申請は「この時間に出社します」と予定表に入れておくだけなので、自分の意志で出社・退社時間を決めることができます。残業が増えたリリース後に、フレックス制度を利用して、勤務時間を調整して残業時間を減らしています。
コロナで働き方の変化はありましたか。
コロナ禍で在宅勤務は原則2日以上になっています。基本的に在宅勤務をしていますが、大きな装置の開発などは会社に来ないとできない仕事もあるために出社しています。会社の方針は在宅できる人は在宅してくださいというスタンスです。
05. 求職者へのメッセージ
転職を検討されている方へのメッセージをお願いします。
アプリケーションの実装ができてソフト開発の経験をお持ちの方で、チームとして力をつけていきたいと考えている方にぜひ来ていただきたいと考えています。私たちはチーム全体で力を上げて、良いものを早く作れるようになることを目指しています。そうしたことに興味を持ち、共感してくれる方を求めています。
そしてソフト開発手法の新たな提案をして欲しいと思います。中途採用の人が他社で培ったより良い開発体制や手法など、提案や意見をどんどん出してほしいと思います。その提案に対して私たちは積極的に耳を傾けたいと考えています。業務だけでなく開発プロセスの改善でも力になっていただける方に期待しています。
ソフトウエアをつくるだけでなく、どうやってつくったかをメンバー全員で共有して、より良い手法を考え、みんなで改善し、ソフトウエア開発チームの力を伸ばして、チーム全体の開発力を高めていく。そんな仕事に興味をお持ちの方のご応募をお待ちしています。