自分の強みを見つけるコツ2「時間の物差しで成長点を見つける」

<細井智彦> 細井智彦事務所代表 転職コンサルタント

大手人材紹介会社にて20年以上転職相談や模擬面接などの面接指導に取り組む。企画し立ち上げた面接力向上セミナーは12万名以上が受講する人気セミナーとして現在も実施中。採用企業の面接官向けにも研修・講義を開発し、人事担当から経営者まで、260社、面接官3000人以上にアドバイスをしている。2016年3月に独立し、フリーな立場から、引き続き個人と企業の面接での機会創出に取り組んでいる。著書『転職面接必勝法(講談社)』ほか多数

自分の強みを見つけるコツ2「時間の物差しで成長点を見つける」

<強みを見つける5つの方法>
1)自分の仕事の求人票を書いてみる
2)時間の物差しで成長点を見つける
3)見本帳から選ぶ
4)思いつく不満や短所を裏返す
5)人に聞く

「強み」を見つける方法 今回は「時間の物差しで成長点を見つける」です。

ちょっと時間を置いて比べると見えてくることがある

世の中には、日々はあまり気にならないけど、ふと気がつけば「えーっ、こんなに!」ということが数多く存在します。例えば、数年前の自分の写真をみて、ちょっと愕然とすることはないですか?肥満、脱毛・・・。あるいは、数年ぶりに会った両親を見て随分、白髪が増えたな、とか。毎日の変化はごくわずかで気づかないようなことも時間が経つとけっこう大きな違いとなっていることは仕事の世界でもあります。

意識してるかしていないかに関わらず成長はしている

転職相談を受けていると、転職理由を「毎日来る日も来る日もプログラミングばかりで、同じ事の繰り返しでもう成長できない。もっと上流の仕事をしたい」ということを話されることがありますが、これは面接ではとても危険です。なぜならば、本来自分の内部との向き合い方の問題である自己の成長を仕事内容に求めてしまい、仕事が同じだと成長できない、と思っていると受け止められてしまうからです。同じ仕事をしていても成長はできるし、しているものです。以前の自分と比較して変わったことを探してみてください。そしてそれが新しくできるようになったことだったらそれは「仕事力」が高まったことです。つまり強みになり得るのです。見つける際のコツがあります。それは、比べる時間の節目を同じ仕事にかかわってきた時間に置くこと。つまり、その仕事に就いた時点と終わった時点(現在の仕事なら今)とを比べてみるのです。例えば、プログラミングでは、バグがでるパターンが見えてきたから、あらかじめ先回りして対策を打てるようになった、とか、ひょっとしたら始めるまえに必ず熱い珈琲を飲むとうまくいくことがわかった、とか。コツが掴めた、上達した、効率がよくなった、なんでもよいのです。変わっていることを探すのです。必ず見つかるはずです。このように、成長とは「変わる」ことだから同じことを繰り返しているだけでは成長できない、と誤解しがちですが、実際は「同じこと」でも繰り返していくうちに学習し進化し、変わっている、つまり進化成長しているということを認識しておきましょう。
そして、この方法の肝となるポイントは、比較の対象が他人ではなく自分だというところです。

他人と比べずに済む

営業職の経歴書などでは、社長賞を受賞!とか2年連続全社MVP獲得!といった言葉をよく目にします。確かに誰でもこういったわかりやすい「順位」や「タイトル」があるとどんなことでもPRするのには便利ですよね。
ただ、他の人より自分はここが優れている!と言える人はどのくらいいるでしょうか。羨ましい限りです。そう言える人はどうぞそのまま突っ走っていってください。そもそもそんな人はこのコラムを読まないかもですね。
社長賞を否定するつもりは全くありません。素晴らしい実績です。ただ、冷静にとらえるとそれはあくまでも過去の結果であり、今後の活躍を予想させる材料にはなりますが、転職先でも社長賞がとれる強みを示す証拠にはなりません。仕事やビジネスで活かせる強みとは、再現できるものでなければなりません。よくお菓子に「モンド賞受賞」ってのがありますが、美味しさの目安にはなるでしょうが、いまでもその会社やお店が切磋琢磨してがんばっているかはわかりません。
なにより、とかく他人との優劣に縛られてしまい、勝てないところばかり目を向けて劣等感を持ってしまうのはよくないことです。自己肯定できる部分を探していかないと身が持ちません。とはいえ、自分より低いレベルの部分をみつけて、それらよりはまし、って思うことも、あまり好ましいとも思いません。
ここは、他人に目を向けるより、自分にはこういったところは強いかも、と思えそうなところを見つけて掘り下げてみるほうが大事ではないでしょうか。 アドラー心理学じゃないですが、他人との関係性のなかで人は生きているので、どうしても他人のことが気になります。「優劣」という言葉自体、そもそも他者がいないと成立しません。勝ち負けの世界は痺れる快感も多いのですが、こと自分の強みの世界では勝ち負けにこだわると、疲弊します。ここでは優劣という視点は100%排除し、ただただ自分のなかで起こった変化だけに着目するのです。時間の物差しで自分と比較すれば他人の出番はなく、気持ちを余分にすり減らさずに済みます。

自分の「こだわる」ポイントを見つける

あと、変化を見つけやすくするキーワードがあります。それは「工夫」と「こだわり」です。ここでは特に「こだわり」にこだわってみてください。どんなこだわりをもって取り組んできたのか、を振り返ってみてください。

「こだわり」が強みにつながる

「こだわり」を持って臨んでいれば、成長を示す強みになることも少なくありません。「こだわり」を持って臨むには「意志」が必要です。この意志をもってことに臨むってことがとても大事なところで、意志を持って変わったのと、ただ変わったのではその後の自分のやりがいや達成感に大きな違いがあります。

強みを見つけることより、もっと大きなメリットがある

実は、この回では見つけ方以上に伝えたいことがあります。それは、この方法で得られるのは強みだけではなく、他にも大きなメリットが2つもあるということ。それをぜひ知っておいて欲しいのです。

2つのメリット

1)自己肯定感が生まれる
2)成長思考を習慣にする(やり抜く力を増す)きっかけができる

自己肯定感が生まれる

応募側だけでなく面接する部門マネジャーたちも、自分の会社や仕事と真正面から向き合って、強みや魅力を見つけて人に語ることは多くはありません。だからそんなとき面接官向け研修では、ケースワークやディスカッションなどで、自社や自分の部門の仕事と向き合っていただき、応募者に語れる魅力をきちんと伝えられるようにしていくのですが、研修を終えたときに、受講されたマネジャーたちから、「意外に自分の会社や仕事も捨てたもんじゃないな、いい会社にいると再認識した、という感想をよく聞きます。
このように他社や他人と比較しながらではなく、自分自身と向き合いながら「らしさ」や「こだわってがんばってきたこと」の発見や成長の軌跡がわかると、「自分再発見状態」になり、なかなか私もがんばってきたじゃないか、という自己肯定感が生まれ、それが「自信」につながります。そして自信をもってことに臨むということは、どんなことでも、ものごとにチャレンジするときに、とても必要で大事なことだ、ということです。

どうせなら「意識」したほうがより仕事は面白くなる

仕事するなら「やりがい」は欲しいものですが、それは仕事の種類で決まるのではありません。つまりやりがいのある仕事とない仕事があるのではなく、どんな仕事でも、目の前の事にどれだけの意志をもって、なにを意識して取り組めるか、にかかっています。
成果が見えないことには、なかなかモチベーションは続きません。成果が見えず評価や報酬(ここでの報酬とは金銭的なものや名誉とかの狭い範囲ではなく、自分が喜べる「幸せな気分になること全部」を意味)がないものには、やりがいやモチベーションが生まれにくいのですが、「こだわり」があると、達成できたかどうか、が見えやすくなり(感じやすくなり)、モチベーションが出てきます。

「習慣」にしてしまいましょう。

あと、続けないと変化を感じることもできません。こだわることができると、続けることができるようになる、これも大きなメリットです。GRITと言われているやり抜く力がいま注目されていますが、大事な要素は「成長思考をもち行動を続けること」のようです。まさに、GRITを鍛える体幹が生まれることにつながると思いませんか。ただ、その際に、成長すること自体を目的にしないことも大事ですね。追い込みすぎない。成長しようと思うのではなくこだわりをもって面白く仕事ができるようになると、仕事力が高まり、その結果、進化成長できる。ポジティブ心理学的に言えば、成長したから幸せになるのではなく、幸せな気分になれると成長できる、って考え方をお勧めします。そんな理論を持ち出すまでもなく昔から日本には「継続は力」という言葉がありました。すごいぞニッポン。あと私が大好きなことばを最後に贈ります。

「これでいいのだ!」

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細井 智彦

細井智彦事務所代表
転職コンサルタント

大手人材紹介会社にて20年以上転職相談や模擬面接などの面接指導に取り組む。
・12万名以上が受講する面接力向上セミナーを立ち上げる
・採用企業の面接官向け研修・講義を開発、これまで人事担当から経営者まで350社、面接官3000人以上にアドバイスを実施。
現在は独立し、フリーな立場から、引き続き個人と企業の面接での機会創出に取り組んでいる。
著書『転職面接必勝法(講談社)』ほか多数

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