企業インタビュー
姫路市の「ものづくり企業支援」「就職支援」についてお話を伺いました。
姫路市役所 産業局 商工労働部 産業振興課・労働政策課
※本記事は2017年に公開されたものを再編集したものです。
01. 姫路市のものづくり企業支援とは
姫路市役所 産業局 商工労働部 産業振興課・労働政策課のみなさま
姫路市がものづくり企業への支援に力を入れられているのはなぜなのでしょうか。
姫路には「ものづくり」の街としての歴史があります。温暖な気候に恵まれた姫路は、古くから交通の要衝として栄え、さまざまな産業が発展しました。江戸時代から姫路城を中心に城下町として鉄鍛冶や皮革、城主へ納める菓子が盛んになり、大正から昭和にかけては重工業が進出して工業地帯を形成しました。
国内外で高いシェアを誇る製品を製造する企業も多数存在しており、平成26年の製造品出荷額等は全国の都市で15位となっています。臨海部に集積する大企業だけではなく1,000社を超える中小企業や、地場産業、伝統産業が姫路のものづくりを支えています。
この本市の強みであるものづくりを活かし、商業・サービス業・観光業など、他の産業への波及効果による好循環を生み出すことで、地域経済の持続的な発展と安定を目指しています。
数ある姫路市のものづくり企業支援の中でも、まず、創業支援について教えてください。
姫路市では、姫路の経済を支える企業を増やしていくための創業支援を目的に、姫路商工会議所と共同で「姫路創業ステーション」を平成27年にオープンしました。創業するにあたっての疑問や課題は人によって異なりますが、「姫路創業ステーション」では専属の相談員がそれぞれ個別にワンストップで対応し、その場で解決できない場合も専門の提携先を紹介しています。 また、補助金や融資を受けるために重要な事業計画について短期間でしっかり学んで頂くために、30時間の無料セミナーを年に4回開催しています。受講者は必要な知識が得られるとともに、受講者だけが利用できる起業時の融資に要する信用保証料補助の拡充や、店舗改装費補助等の特典も用意しています。事業を開始して2年目ですが、平成28年度は106名が本制度を利用して創業されており、目標の70名を大幅に上回りました。受講者の感想としては、セミナーの内容に満足したことはもちろん、受講者同士のつながりができる点が好評なようです。
02. ものづくり企業支援について
市役所前にて
既存の企業に対しても、様々な支援をされていますよね。
姫路市では、新製品や新技術の研究開発から販路開拓、販路拡大まで幅広く支援をしています。
例えば、新製品や新技術の研究開発では、兵庫県内にある放射光施設やスーパーコンピュータといった科学技術基盤を活用した研究開発の支援事業を行っています。播磨科学公園都市には、大型放射光施設「SPring-8」や中型放射光施設「ニュースバル」のほか、X線自由電子レーザー施設「SACLA」があり、実際に施設を利用し、その操作方法や性能・効果を体験できる実習を行うことで、高く感じられる放射光への敷居を下げ、企業の研究開発に利用してもらっています。スーパーコンピュータも同様に、ポートアイランドに「京」と産業利用専用の「FOCUSスパコン」が隣接しているため、シミュレーションをどのようにものづくりに活用するかという講義と使用の実習を行っています。実際に使う際には、施設ごとにトライアルユースの制度がありますが、本格的に利用する場合には、姫路市が「科学技術基盤活用促進事業」補助金により利用料等を支援しています。シミュレーションをするためには高額なソフトが絶対必要なのですが、それも補助金の対象となっている点が、企業からは好評ですね。
また、市内には兵庫県立大学姫路工学キャンパスがあるため、産学連携への取り組みを進めています。市内の大学だけでなく市外の大学の共同研究専用施設での共同研究でも活用できる補助制度等により支援を行っています。
さらに、中小企業の成長分野への挑戦を後押しするための奨励金制度も実施しています。 新製品や新技術が完成した後の支援としては、今年30年目になる「ものづくり開発奨励事業」があります。中小企業のその年度の新製品・新技術を募集し、受賞した新製品・新技術に対して奨励金を交付するとともに、翌年度に展示会への合同出展や情報誌への掲載等によりPRするなど、企業を応援しています。
また、特許の取得や国際規格等の認証取得に関する支援も行っています。 販路開拓や販路拡大の支援としては、国内・海外で開催される見本市・展示会等への中小企業への出展支援や、企業が海外で事業を行うためのよろず相談窓口の開設などがあります。
そして、平成29年度からは新たな支援として、企業のIT化の推進を目的とした補助制度を新設します。今後も、市内企業を取り巻く環境に応じたサポートをしていきたいと考えています。 補助金等についての詳細については姫路市産業振興課のHPをご覧ください。
開発を生むところから販路拡大まで一気通貫で支援されているのですね。実際に製品を量産するとなった際に、姫路に工場を建てるための支援等はあるのでしょうか。
製造業、道路貨物運送業・倉庫業は、工場を新設・増設する際に奨励金制度を利用することができます。他都市と比べて特徴的なのは、中小企業に対する要件を低く設定している点にあります。姫路市は中小企業、特に製造業が非常に多い都市ですので、中小製造業者の投資規模に合わせた、利用しやすい制度にしています。具体的には、投資した土地や建物、償却資産に対する固定資産税等の一定額相当を6年間、奨励金として交付する制度であり、機械設備の更新だけでも3000万円以上の投資をして頂ければ奨励金の対象になります。建設場所も市内全域で可能で、制度の認定件数は他都市が年間数件のところ、姫路市では今年はすでに約40件の認定があります。また、雇用奨励金もあり、この奨励金制度を通じて大企業の工場はもちろん、それを支える中小企業に対しても、投資だけではなく雇用の促進も含めて、姫路市全体でものづくり企業をバックアップしようという狙いがあります。
03. 姫路で就職したい方への支援について
2017年1月に開催した「就活ツアー」
企業サイドのお話を伺いましたが、姫路で就職したい!という方に対しても支援を行われているのでしょうか。
高校生や大学生、そして社会人の方に対しても様々な支援を行っています。
姫路の市立高校について、教育委員会と協力しながら、現場の見学・会社説明・質疑応答で構成された企業見学ツアーを行っています。姫路には様々な企業が多くあるのだと認識してもらうとともに、単純な見学で終わらないよう学校で事前学習や事後の振り返り学習をしてもらい、生徒の作成したレポートを企業へ提出して優秀者に表彰するといった取り組みも行っています。実際に見学した企業へ就職した生徒もいますし、大学進学率がほぼ100%の学校でも、大学卒業後、就職する際に地元の企業を意識してもらえたらと思っています。
大学生については、平成28年度は、兵庫県や姫路経営者協会と合同で、「企業見学・交流ツアー」を実施しました。島根大学、香川大学、鳥取大学の工学部と高知工科大学の学生約50名に、バスで姫路に来てもらい、企業見学や、姫路の理系企業の合同企業説明会に参加してもらいました。 また、平成28年度は、姫路を知ってもらい、姫路に就職することを目的に首都圏の若者を対象とした3日間の「就活ツアー」を実施しました。夜行バスで姫路に来てもらい、1日目は、好古園や姫路城などの観光地や、開発が急激に進んでいる姫路駅前を見てもらいました。2日目は企業との合同企業説明会を行い、そのあとには地方創生や福祉、子育ての部署の担当者と意見交換することで、保育や病院、住宅といった、姫路に住むにあたっての身近な質問にお答えしました。3日目は御座候の工場で製造過程や、関西電力の第一火力発電所を見学しました。初めての試みでしたが、参加者からも好評で、平成29年度以降の開催を望む声もありました。姫路市は、平成29年1月時点で有効求人倍率が1.61と高い数値となっているため、姫路出身の方に帰ってきてほしい、外からも姫路に来て欲しいという期待から事業を実施しています。このような企画以外に合同企業説明会の開催や兵庫県が東京にカムバックひょうごセンターなどの窓口を設けるなどのUJIターン支援をしていますので、ぜひ活用して頂きたいです。
姫路への移住を考えられている方に、おすすめポイントはありますか。
暮らしの面ですと、病院が多く、駅前にも新たに病院ができる予定です。駅周辺の開発も進んでおり、以前より歩行者に優しく、ショッピングも楽しめるようになりました。 食べ物は、姫路おでんが有名になりましたが、鱧、穴子、坊勢鯖、牡蠣、いかなご等の海の幸、桃色吐息という豚肉、姫路和牛、さらには姫路の酒蔵で造られるお酒など、おいしいものを挙げるときりがないぐらいです。
また、地元の人が市外から来た人も受け入れてくれるため、馴染みやすいと思います。移住した直後で、最初は知り合いがいない職場でも色々とサポートもしてくれるはずです。浜手の方では祭りが盛んなので、地元に入り込めばみなさんすぐに声をかけて仲良くして下さるため、生活しやすいと思いますよ。
最近はマンションもたくさんできており、市外から移住される方も増えています。就職や移住についてご相談があれば、姫路市役所で受け付けておりますので、お気軽にご相談頂ければと思います。
お聞きした以外にも数多くの支援をされている姫路市。どれも街・人・産業を元気にしたいという視点に立って作られたものです。ものづくりの歴史を持ち、ものづくり企業を数多く抱える姫路市へ、皆さまも就職・転職してみられてはいかがでしょうか?
本日はお忙しいところお時間を頂きありがとうございました!