目の前に数多く転がっているチャンスに気づくようになるためには、
まず仕事というものがどのように流れているのかを理解しなければなりません。
あなたに依頼された仕事は、なぜあなたに依頼されたのかということです。
初めに認識しなければならないのは、
仕事を依頼してきた人(多くの場合、上司やお客様)が担当している仕事は、
あなたに依頼してきた仕事だけではないということです。
つまり、数多くの担当している仕事の中から、
あなたにやってもらうことを選び、依頼しているのです。
では、なぜあなたにその仕事を依頼したのでしょうか。
他の社員にお願いしたり、アルバイトに頼んだり、
外部のパートナーに発注したりもできたはずです。
実は依頼者は無意識のうちに、次のような思考を行っています。
まず、その仕事の重要度と難易度を鑑み、どのレベルの人に頼めばいいかを考える。
次に、思い浮かべた人の能力や実績を思い返し、
期待に応えてくれるかどうかを検討し、頼む人を決める。
先輩が担当することになった仕事も、あなたが担当することになった仕事も、
すべてこのようなステップを経て依頼されているのです。
一つ一つの仕事の重要度や難易度は様々です。
重要で難易度も高い仕事は、能力も実績もある人が行うことになり、
重要度も難易度も低い仕事は、能力も実績も十分でない人に回ってきます。
この当たり前の法則を理解することが重要です。
そして、当然ながら新人は一番下の重要度も難易度も低い仕事から任されるのです。
チャンススパイラルに乗るためには、
新人はここで与えられた仕事をきっかけに、
一つ一つ上のレベルに上がっていかなければならないのです。
ですが、多くの新人は一般的に重要度も難易度も低いと
思われている仕事の「新人にとっての重要性」に気づいていません。
目の前にあるチャンスがチャンスに見えない原因がここにあります。
「最低でも期待値を超え、可能な限り感動を与えよ」
例えば、あなたがデスクで仕事をしている時に、上司からこんな依頼をされたとしましょう。
「お客様が来てランチミーティングをするから、みんなの弁当を用意してくれるかな」
頼まれた瞬間の反応だけでも、10人いれば10通りの反応があるでしょう。
「はい!喜んで!」と笑顔で返事をする人もいれば、
作業の手を止めず目も見ずに、「わかりました」
とだけ言う人もいるのではないでしょうか。
いずれにしてもあなたは弁当を買いに行くことになりました。
この状況であなただったら次のどれに近いでしょうか。
①お客様の好みを上司に確認し、弁当とお茶を買ってきて、
会議室の一人一人の席に用意した。
②弁当と飲み物を人数分買ってきて、会議室に用意した。
③弁当を買ってきたが、飲み物までは気が回らなかった。
このように弁当を用意するということだけでも、
これだけ行動に違いが表れます。
そして、この行動を見て、仕事の依頼者は
あなたに対するジャッジを無意識に行ってしまうのです。
依頼者は無意識のうちにあるレベルの期待値をもって、
あなたに依頼しているからなのです。
②のリアクションに対し、依頼者の期待値が同じレベルだったとしたら、
依頼者は小さな満足感を得るでしょう。
しかし、期待通りですので特に感情的な変化は生まれません。
では③のアクションだったらどうでしょうか。
これは明らかに依頼者の無意識の期待値を下回っています。
確かに飲み物も用意しろとは言われませんでしたが、
依頼者からすると「飲み物を用意するのは当たり前だろ?使えないヤツだ」と言いたくなります。
注意をしなければならないのは、こういう状況で正面から
「それくらい気づけ!バカ野郎!」と言ってくれる人が
次第に少なくなってきているということです。
依頼者の多くは心の中でそう思っていながらも、
優しく「飲み物は買ってきてないの?今度はよろしくね」などと
自分の気持ちを抑えて話をし、そして、二度とこの人には頼まないと心に決めてしまうのです。
では、①のアクションを取ったらどうでしょうか。
これは依頼者の無意識の期待値を超えている状態です。
この状態になると、依頼者は小さな驚きと感動を覚え、
あなたの事を「使える新人」と評価し、次は別の仕事を頼んでみようという気持ちになるのです。
弁当を買ってくるというただの雑用にしか見えない仕事も、
次につながるチャンスにする人もいれば、
そこから評価を落としてチャンスを遠ざけている人もいるのです。
【出典】「伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人の10の違い」紫垣樹郎・小宮謙一 著